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2018

覚え書き

話術の話

今週は依頼を受けて某所で「統計リテラシー」のセミナーを開催しました.本来のわたしのスタイルは実験計画などの事例指導を兼ねて,自らも技術者の一員として一緒に問題解決に挑むというものなので,通常はセミナーなどを自主的に実施することはありません.もちろん,要望があれば,実習形式のセミナーでJMPの操作なども教えたりしていますが,単なるセミナーはあまりやりたくないのです.講演するならば他にもっとうまい人がいるし,そもそも人前で話すのが苦手だからです.よく「そうは見えない」と言われますが,いつも人前で話すのはとても緊張します. ロバート・ライト(2017)『なぜ今,仏教なのか』早川書房によれば,お釈迦...
覚え書き

暗黙知と問題解決

先週の続きを書こうとしたのですが,三週続くと飽きるので急遽話題を変えることにしました.そこで本日は「暗黙知」について解説します.元々は3年ほど前のJMPer’s Meetingで発表した際の配布資料で,(ページ数の制約から最終的に原稿からカットしましたが)『統計的問題解決入門』の第5講のオリジナル原稿の一部にもなっていました.それに少し修正を加えて以下に掲載します.暗黙知という言葉をご存知でしょうか?どこかで聞いたことあるという方も多いかと思います.「大事なことは言葉では表せない」というようなコンテクストで使われることが今の日本では一般的で,以心伝心とか拈華微笑などとも同意です.因みに,拈華微...
覚え書き

AI vs. 教科書が読めないこどもたち(その2)

先週の続きです.『AI vs. 教科書が読めないこどもたち』p73の表1-1は「10-20年後になくなる職業トップ25」というリストで,その第4位に「コンピューターを使ったデータの収集・加工・分析」があって.それを見た人からJMPを勉強しても無駄になるのか?と質問を受けました.日本人は本を読まなくなったとはいえ,売れている本の影響力はまだまだたいしたものだと思った次第です.さて,短い答えを先に言うと,これは誤訳です.この表の出典は松尾豊「人工知能は人間を超えるか」角川EPUB選書とのことで,更にその原典は先週も引用しましたC.B.Frey and M.A.Osborne (2013), "TH...
覚え書き

AI vs. 教科書が読めないこどもたち(その1)

本日は,新井紀子(2018)『AI vs. 教科書を読めないこどもたち』東洋経済新聞社について.少し前に読んでいた本なのですが,ブログに書くのを見合わせていました.迷った末にやはり書くことにします.というのも,この書籍のp73の表1-1に「10-20年後になくなる職業トップ25」というリストがあってその第4位に「コンピューターを使ったデータの収集・加工・分析」とあるのを見た人から「JMPを使えるようになっても将来は役に立たなくなるのではないか」と聞かれたからです.確かにIBMのWatsonはSPSSを使って統計分析をしますし,そのような懸念も出てくるかもしれません.でも,これには著者の勘違いが...
JMPではじめる統計的問題解決入門

MCDAアドインのアップデート

本書のサポートアドインであるMCDAアドインのアップデートについてお知らせします.不具合修正と同時に若干の改良が加わりました.不具合というのは最適化の条件がローカルに保存できないというものでした.これができないと様々な最適解(の候補)の比較検討(即ち,このアドインの目的である多基準の意思決定)がやりにくいのです.実はこの不具合には気づいたのは昨年の出版記念セミナーで発表したときのことでしたが,クリティカルな不具合ではないので修正はいつでもいいからと開発者に報告だけはしていたのですが,ようやく修正していただけました.今回,JMPのプロファイルにある機能を実装してもらえたので,赤三角メニューの設計...
覚え書き

疲れる話は続く

今週は泊りがけで出張だったのですが,隣の部屋の宿泊客の鼾で眠れずひどい目に合いました.もともと枕が変わると寝付けないたちなので予算ギリギリに広い部屋に泊まっているのですが,低周波の音には効果はなかったようです.フロントに聞くと隣の人は連泊されるとのこと.お願いして別の部屋に変えてもらい,翌日はことなきを得たのですが,当日は朝早くに目が覚めてしまって,なんとなくTVを見ていました.自宅にはTVがないので,ホテルに泊まったときなどつい珍しくて見てしまうのですが,早朝ですと通販番組くらいしかやってないんですね.アメリカに住んでいた頃はAs Seen on TVをこよなく愛していて色々な通販商品が自宅...
覚え書き

疲れる話

まだまだ暑い中でエアコンが故障してしまいまして,ダメ元でお願いしたら翌日には修理に来てくれたのですが,その晩は大変な目にあいました.寝不足でバテバテだったのですが,来ていただいた修理の方がわたし以上にお疲れの様子.聞いてみると,やはり今年の夏は大忙しのようで,その日も10件のお宅を回らなければばならないとか.冷却ガスのボンベを運ぶのも辛そうだったので,手伝ってあげたりしたのですが,あの様子では疲労のために作業効率も上がらないでしょうし,何かの事故に繋がらないかと心配してしまいました.本日は疲労について考えてみます.何らかの作業・活動をシステムと捉えたとき,その出力として疲労あるいは疲労感が考え...
覚え書き

フォローアップセミナーのフォローアップ

先日のフォローアップセミナーには,暑い中での開催にも関わらず多くの方に参加して頂きました.この場であらためて感謝いたします.今回は読者限定セミナーという性格から先着順にはしたくなかったので,SAS社の営業さんから開催案内をしてもらうことにしました.このためか,蓋を開けてみれば予想よりも業界が偏ってしまいました.今後,同じセミナーを別の分野の皆さん対象に広げていく予定ですので,その機会があればぜひおいで下さい.それと第5講を対象とした今回の続きのセミナーは必ずやります.今度はもっとゆっくり時間を掛けて,懇親会の場で公開事例相談などをやるという案も出ていますので,実現したらお互い有意義なイベントに...
覚え書き

台風とJMP

アドインの話の続きを書こうと思ったのですが,同じ話が続くのは避けて本日は台風の話でも.先日の台風は,合同台風警報センター(JTWC)ではかなり前から上陸はしないとの予報でしたが,気象庁の予報では数日前まで関東直撃でした.個人的にはJTWCの予報の方が当たるような気がしているのですが,まっすぐに関東地方に向かってくるのでどうなるかと興味深く観察していました.結局,JTWCの予報通りになり,何事もなかったように過ぎ去ったわけですが,犬吠埼に最接近した以降の後半の進路は定性的には気象庁の予報に近かったようにも思います.気象庁も予測精度については米軍に引けは取らないのでしょうけれど,台風の進路の長期予...
書籍サポート

パラメータ設計のアドイン(その2)

先週の続きです.パラメータ最適化のためのアドインについてそれぞれの違いなどを説明しようと思います.本日はHOPEアドインとSRPDアドインについて.もっとも端的に説明するならば,これらのアドインを使えばパラメータ設計のためのJMP操作が簡単になるということでしょうか.この図(クリックで拡大表示します)に示したように,HOPEアドインの設計画面にはJMPでは赤三角から「因子グリッドのリセット」で呼び出さなければならない各種設定がGUIに実装されています.これだけで便利なので,なぜJMP標準になっていないのか不思議なくらいです.見た目だけではなく,実はこの二つのアドインは今年の1月13日の記事で言...
書籍サポート

パラメータ設計のアドイン(その1)

パラメータ設計のアドインについて質問を受けました.私の知っている限りでは,本書のために開発したMCDAアドイン以外にも,HOPEアドインとSRPDアドインがあります.実はこの三つのアドインのベースは同じものなのですが,それぞれの機能と思想が違っています.それらの違いについてお話しする前に,本日はまずその1としてなぜアドインが必要なのかについて説明しておきます.JMPでは「満足度の最大化」でパラメータ設計ができるのはご存じでしょう.「プロファイル」とシームレスに繋がっているので使いやすい一方で,本格的なパラメータ設計には機能面で少々物足りないことも事実です.例えば,実験計画で応答の目標を設定する...
覚え書き

神の視点

コメントをいただいたことを受けて,本日は観察について書きます.暑いので短めにします.計画作成に先だってシステムについての考察は必須であり,そこでは観察が重要なのはいうまでもありません.とはいえ.観察には対象を注視するというニュアンスがあるので注意が必要です.以下の考察は,ボー・ロット(2017)『脳は「ものの見方」で進化する』サンマーク出版にインスパイアされています.この本によると.脳神経科学では,私たちの脳内で生まれる可能性のある「知覚」の適応度地形モデルという概念があるようです.ここ言う「知覚」は思考や概念,行動あるいは判断と読み替えても構いません.脳内で生まれる可能性のある「知覚」は無数...