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変異株をJMPで見る

JMP

今年も去年同様に外出しないで過ごす連休となってしまいました.コロナウィルスの性質は既によく知られていたので,変異株が入り乱れる今の状況は当然予想されて然るべきでした.こうなると,今後の展開は偶然の結果次第なので,Googleだろうが誰であろうが予測不能なはず.この状況は地震と似ている.地震がいつ来るかは基本的に予測不能だから,その不確実性のもとに生活している私たち日本人には,今の状況に対処する素養があるはず.様々なケースを想定した準備と心構えが,今のコロナを乗り切るには重要なんだと考えてます.

ということで,今日は時間ができたので,連休明けのセミナーのネタ探しを兼ねてJMPで遊んでます.そもそも『イギリス型』『南アフリカ型』『ブラジル型』の三つの変異株がどのように勢力を拡大しているのかと,ふと疑問に思ったのがきっかけ.検索すれば,すぐに東京iCDCにおける変異株スクリーニング検査についてというページが見つかったので,このページのグラフを再現してみます.データはこの表をスクロールダウンして,「都内の変異株の発生割合(東京都健康安全研究センターによる調査)」のグラフの下にPDFへのリンクがあるので,そこからダウンロードします.

ご存知の通りJMP15からPDFウィザードが実装されたので,このデータをJMPに取り込むのは簡単です.日本語のPDFだと文字化けして上手く行かないことも多いけど,これは問題なし.しかもお役所のPDFにありがちな凝ったレイアウトもされてないから,変換も簡単にできる.一つやっておいた方がいいのは,左上のセルを右クリックして「列の分割線を追加」です.というのも,このPDFをJMPが自動検出すると,テーブルに空白セルが入るので,変数名をうまく取り込めないからです.言葉で説明するのは難しいけど,この図のように手動で分割線を追加すればOKです.

その後,テーブルの設定上端をマニュアルでタイトルが入らないように変更し,その上で赤三角から「見出しとして使用する行数」を「2」にします.これでようやく1行目のタイトルを分離して所望の変数名を取り込めます.プレビューだとこのようになるはず.

『OK』してテーブルを作成したら,1行目が不要なので削除して,テーブルの期間の変数を積み重ねます.それから,「列4」をフィルタリングして「陽性数」だけを残します.あとは「グラフビルダー」で積み上げ棒グラフを描けばいいんだけど,デフォルトではこのようになって,東京都のグラフと違います.

東京都のグラフでは縦軸が割合になっているからだけど,JMP15から実装された機能を使えば,新たな計算式を作ることなく,このグラフが再現できます.それには設定パネルの「要約統計量」を『各因子水準内での%』にします.

このグラフを自ら描いてみて,改めて気付いたのは,N501YとE484Kのせめぎ合いが起こっているんだなということ.そしてなぜか東京では,4月半ばまではE484KがN501Yを抑え込んでいた模様.4月19日の週にE484Kがガクッと減少してバランスが崩れた理由は不明だけど,この後のデータを見てみないとなんとも言えない.

おそらく東京では大阪とも違う戦況になっていたんだろう.N501Y株もE484Kも,共に従来のウイルス株よりも感染力が強いらしいけど,N501Y株の方が重症化しやすく致死率は従来の約1.6倍とされています.だから,東京では重症化率は低く抑えられているのかもしれない.昨日の時点で,ECMO装着者数は大阪が15人に対して,東京が5人.N501Yの勢力が東京でも拡大して,大阪と同じ状況になるのか.

大阪のECMO症例の年齢の中央値は第三波までが67歳だったけど,この第四波では53歳と明らかに様子が違うのも気になる.大阪の皆さんは,今までとは違うという状況を認識し,それを踏まえた意思決定が,東京に皆さんは様々なケースを想定した準備と心構えが必要かもしれません.こういうときこそ,自ら分析した情報は信頼できますね.

それでは.

統計的問題解決研究所

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