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アメリア・イアハート効果

書籍サポート覚え書き

 昨日の続きです.パラメータ設計において「アメリア・イアハート効果」を関連付けるとすれば,多特性の最適解にはならなくても単特性の最適解にはなり得る解があって,それらの解にも価値があるということではないでしょうか.ちょっと事情があって英語環境からの説明になって申し訳ないのですが,このような解を求めるには,Profilerの赤三角から「Optimization and Desirability>Set Desirability」で「Response Goal」の設定ウィンドウを出して一番上のプルダウンから所望の特性以外のGoalを「None」にします.(すいません,日本語での表記はうろ覚えなので,英語のままにしています.)ここのインターフェイスが前からわかりにくいと思っているので少し説明します.

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この例でY1だけの最適化をしたい場合は残すとすると,『OK』でY1はスルーして→プルダウンからNoneを選択→『OK』→ プルダウンからNoneを選択→『OK』という手順となります.それから最適化を実行すればY1だけの最適解が得られることになります.

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多目的最適化でなければならないような事例であっても,それぞれの単特性の最適化を独立に実施してみてください.それは人と同じことをやらずに,狭くてもその世界での一番を見つけるようなものです.例えば,Y1単独の最適解の意味するところはY2,Y3の制約がなければそのシステムはY1に関する限りはそこまではいけるということです.そのシステムのY1についての可能性とも言えます.この情報を得た後に他の特性の制約を一つ一つ(すべての組み合わせで)解除していくことで,どの特性がY1の可能性を妨げているのかがわかります.いわゆるトレードオフの関係が把握しやすくなります.
とはいえ,それぞれの単特性の解は尖った解です.システムとして全体のバランスに欠けているのでそれらは安定した解ではなく,アインシュタインの言葉でいうところの幸せな解ではありません.幸せな解を見出すにはすべての特性を最適化に組み入れた多目的最適化によるべきであることは言うまでもありませんが,JMPのような計算機支援最適化ではこのとき注意があります.
それは品質工学でやるような二段階設計では真の最適解が得られない可能性があるということです.二段階設計とは具体的に言うと,Y1単独の最適解を踏まえて部分的に設計因子を固定し,その状態で別の特性の最適化を実施するという設計手法のことです.基本的にコンピュータによらず,SN比と感度という比較的単純な特性の最適化である品質工学においては,二段階設計は有効な手法なのかもしれませんが,私たちのようにもっと精度の高い(複雑な交互作用を扱う)統計モデルに基づく最適化では真の最適解にたどり着けないこともあり得ます.JMPによる多目的最適化では必ず,すべての設計因子をフリーにして同時に最適化するように心がけてください.
以上まとめますと,ステップ1として,多目的最適化では個々の特性を単独で最適化すること.優先順位の高い特性から始めると良いでしょう.その際,最大化したい特性であっても,最大化だけでなく最小化も実施します.ですから最適化という言葉は正確ではなくて,その特性に対するシステムの可能性を把握すると言ったほうが正確かもしれません.次のステップとして,優先順位に従って別の特性を最適化に加えていきます.優先順位が同位の特性がある場合は,すべての組み合わせで実施することが望ましいです.締めくくりのステップ3で,すべての特性を同時に最適化します. 
なぜ最初からステップ3を実施してはいけないかというと,JMPの満足度の最大化では,すべての応答空間を網羅して満足度を計算しているわけではないので,たまに局所最適解に陥ってしまう場合があり,そのような状況であることを見抜くためです.更には,最適解が見つからなかった場合,特に望目最適化であれば,目標値をほんの僅かずらすだけで準最適解とでも呼べるような解が見つかる可能性を探るためです.特にJMPの望目最適化はピンポイントでしか目標値が設定できないのでそのような状況になっている可能性は十分あります.
この状況では,本書にダウンロードバンドルしたMCDAアドインが大変有効です.JMP単独ではできない最適化ができるMCDAアドインについては本書では書ききれなかったのですが,文字だけでの説明では困難なので,SAS社のご厚意でゼミを開催する予定にしています.実施日等の詳細は未定ですが,MCDAアドインを使いこなしたいという方はぜひおいで下さい.
というわけで,JMPで最適化する際は,伝説の女性パイロットのエアハートのことを思い出してくださいね.
それでは,強引に落ちをつけたところでまた.

3/12追記
発音としてはエアハートだとしても日本語の用語としては「アメリア・イアハート効果」が正しいので本文を修正しました.

統計的問題解決研究所

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