昨日の『僕らが毎日やっている最強の読み方』の紹介で,TVで使用されたグラフに問題があったことをお話ししました.TVというメディアは新聞と違って中立性が求められています.電波という公共財産を占有して営まれる事業には公共性が求められるからで,そのために放送法という法律では,その第4条で以下のようなことが放送事業者に求められているのです.
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
ですから,TVで使用されるグラフはデータを正しく可視化したものであるべきで,そこに人間の思惑が入った何らかの主張をサポートするために視覚化したものであってはならないはずです.(因みに,新聞はこの限りでありません.)この点が,プレゼンで使われるグラフとの違いですね.
一方で,視聴率を取らなければならないという制約下では,TVというメディアが見た目を飾るためにチャートジャンクを多用するのは責められません.チャートジャンクとはグラフを構成する要素の中で情報量を担わないもの,あるいはそれらを多用したグラフのことで,詳しくは三重大学の奥村先生のブログをご覧になってください.
単にグラフを装飾するだけといっても,そこには人間の意志が入り込んでしまいます.このため,チャートジャンクは時として人間の思惑そのものでもあるのです.ですから,グラフのチャートジャンク量がそのグラフの信頼性をが判断する一つの指標でもあるのです.自分であればそのデータをシンプルなグラフにしたらどうなるかを考えてそれとの差分で判断すればいいのです.ここで重要なことがシンプルなグラフを描く技術です.
それではシンプルに描いたグラフとはどのようなものかというと,一つのヒントがJMPのグラフ(デフォルト設定)だと考えています.エクセルで描いたグラフはデフォルトでさえ幾つかのチャートジャンク(グラフのグレーの背景がその一つです.)が含まれていますが,その点,JMPで描いたグラフはデフォルトではシンプルなものです.JMPでは特定の3Dグラフ(曲面プロットと三次元散布図)も描くことはできますが,あくまでもそれが表現できるデータである場合に限ります.変数が三つないと三次元グラフは描けません.一方,エクセルでは悪名高い3D円グラフなども描けてしまうのでチャートジャンクが紛れ込む危険性があります.念のために補足しますが,3Dグラフがいけないのではなくて,何ら情報をもたらさない三次元化が良くないということです.グラフの3D化は究極のチャートジャンクです.SASの方に伺ったのですけれど,以前からJMPで3Dグラフを実装して欲しいという要望はあるそうです.(おそらくSAS社はその要求には応じないのではないでしょうか.)
『統計的問題解決入門』でもグラフの可視化と視覚化についてお話ししていますので参考になさってください.
それではまた.
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