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JMP15で何が変わったか? その2

覚え書き

「グラフビルダーの機能向上」については先週のブログでは詳細には触れませんでしたので,少し評価してみました.といっても,まだ十分に内容は把握できておりませんので,思い違いとかあるかもしれないことご了承ください.そもそも,JMP15のグラフビルダーの新機能については,色々と公式リリースには書いてありますけど,(少なくとも私が)日常的に使う機能ではないので,気付いていないことも多いと思います.


公式の説明には箇条書きでいくつかの項目が並んでいるので,それらを追っていきます.

a) ヒートマップおよび箱ひげ図をカスタマイズする新しいオプション。
この2つのグラフにオプションが加わったとのことですが,確かに「箱ひげ図」には「幅の割合」という項目ができましたが,「ヒートマップ」には違いは確認できていません.確認しておきます.

b) 等高線の滑らかさを設定できる
こちらの改良はすぐにわかります.「線」の描画ON/OFFと「滑らかさ」に加えて「等高線の種類」が加わりました.

従来の等高線図ではデフォルトの「ノンパラメトリック密度」が描画されていましたが,それ以外に「バッグプロット」と「最高密度領域」が指定できます.「バッグプロット」はあまり馴染みないかもしれませんが,このように通常の「箱ひげ図」を二次元に拡張したものです.

中高にあるのが二つの変数の中央値をXY座標とする点です.解釈のコツがつかめれば,二変量の関係を把握するのに強力なツールとなるはずです.今回のグラフビルダーの改良ではこれが一番気に入りました.

c) 列関数に「度数」オプションを反映。
文字通りと思いますので説明は飛ばします.

d) 区間スタイル >バンドオプションにより、設定した区間を塗る。
これは区間をIバーでなく,塗りで表示するオプションが追加されたというだけです.このようなグラフを使った論文はたまに見かけることがありますが,通常は使わないと思います.

e) 回帰直線グラフ内での時系列予測。
この機能がグラフビルダーでは最大の売りかもしれません.冒頭のグラフは「回帰直線」の「あてはめ」を「時系列」にしたグラフです.これ以外に「ロバスト Cauchy」も選択できるようになっています.JMPでは,すでに「外れ値を調べる」に実装されている「ロバスト推定による外れ値」の左上チェックボックスの『Cauchy』オプションで使われている手法です.滅多に発生しないイベントでは分布がロングテールになりますが,このようなイベントをCauchy分布に従うと仮定してロバスト回帰推定できます.ウェイト関数の設定などの難しさもありますが,特に実務ではデータの性質によってはとても有効です.

f) 回帰直線の予測式や、棒、点、折れ線グラフの式をデータテーブルに保存する機能。
「回帰直線」の赤三角に「計算式の保存」が実装されています.「モデルのあてはめ」が不要になるというわけではありませんが,単回帰で十分というような用途で手軽さを追求していくとこの方向になっていくのでしょう.予測式だけでなく信頼区間も同時に保存され,ちゃんと中心化されているし十分実用的です.

その他にも,グラフビルダーには細かい変更がなされているようですが,時間もないので検証作業はここまでとします.JMP15のグラフビルダーには普段使う機能としては大きな違いはないのですが,個人的な評価は「バッグプロット」が気に入ったのでB+です.

「グラフビルダー」についてはここまでにして,改めて先週の続きを.
6.仮想結合では1つの列に対し、複数の列プロパティ(「リンクID」、「リンク参照」)が設定可能。
これは文字通りかと.個人的な評価はBです.

7.ローカルデータフィルターの列フィルター制御に、ヒストグラムを表示可能。
「情報デコレーション」と通じるものがあります.オプションでヒストグラム表示が選べればよかったのですが,連続尺度の変数ではデフォルトになってしまっています.便利といえば便利なのですが,場所(高さ)を取るので多くの変数をフィルタにかける場合にとても邪魔でになるので,従来のスライダーの方がありがたかったです.赤三角から「ヒストグラムと棒グラフの表示」のチェックを外すこともできますが,スライダーではなくて幅のあるバー表示になります.このメニューは変数ではなく,「ローカルデータフィルター」の赤三角メニューに実装されているので,変数毎に表示をON/OFFすることができません.従来の表示を残してもらいたかったので,個人的な評価はCです.

8.新しいホバーラベルオプションより、グラフで利用可能な情報を拡張:
例えば点のようなグラフ要素の右クリックメニューに「ホバーラベル」が実装されています.ヒストグラムなどのプリセットも備わっていますが,この機能を有効に活用するには「ホバーラベルエディター」からスクリプトを書く必要があると思います.このためには最低限のJSLの知識が必要です.今後,面白い活用法を考えたいと思っていますが,現時点ではあまり使うことはなさそうです.将来性を見込んでB+の評価としておきます.

9.「一変量の分布」プラットフォームの工程能力分析レポートを強化(現在の[工程能力]オプション)。
「一変量の分布」の変数名のレポートの赤三角メニューにある「工程能力」に「工程能力オプション」というオプションが加わっています.分析メニューに「品質と工程>工程能力」があるので,「一変量の分布」の赤三角メニューからここまでの機能を呼び出す必要がるのかは疑問です.従って,個人的評価はBです.

10.ヘルプメニューが、jmp.comのドキュメントページで参照できるようになり、ソフトウェアのインストールサイズがより小さくなり、ヘルプが頻繁に更新されるようになる。
常時WEBに接続できない環境の人もいるので,これは改良でもあり改悪でもありといったところでしょうか.ユーザビリティからはオフラインヘルプの方が優れていることもあるので,これについては評価はCとします.

11.macOSのダークモードに対応。
ジョン・ソールさんが「fix it!(直せ.)」と命令したとかで,もう少し早く対応すると聞いていたのですが,これは文句なしに評価Aです.

先週と今週の評価を顧みると,個人的にはやや辛めの評価になってしまったようです.正直なところ,私にはさほどインパクトはなかったのは事実ですが,ここまでの評価は「JMP15の新機能の概要」の一番上の項目である「データの読み込み、データテーブル、クリーニング、データの可視化など」に関してのみです.その後に「データ共有」「実験計画(DOE)」「統計、予測モデリング、データマイニング」「自動処理とスクリプト生成」と続いています.これらの新機能では,JMP Proに実装された大物が目立ちますね.JMP15の開発リソースはJMP ProとJMP Liveに集中させたのかもしれません.今後は世界規模ではJMP Proへの移行が進んでいくのでしょうか.これらの機能についても継続して評価してこのブログで紹介していきたいと思います.

今回はこれにて.それでは.

統計的問題解決研究所

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