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選択の科学

覚え書き

表紙に写っている著者の写真に惹かれるものがあって手にとったのが,シーナ・アイエンガー(2014),『選択の科学』 櫻井祐子訳,文藝春秋です.自信に満ちたその姿はタイトルの「選択の科学」のなせる技なのかもしれません.読んでみて驚いたのは著者のハンディキャップのことばかりでなく,あの有名なジャムの実験の研究者であったことです.

書評ではあまりネタバレしないように心がけていますが,この実験は有名なので簡単にご説明しておきます.ジャムの試食販売で26種類を並べた際には試食客のうち購入したのはたった3パーセントだったものの,6種類しか並べなかった場合は集客は少なかったにもかかわらず30パーセントの客が購入に至ったため,結果として6種類の試食販売では購入客は26種類の6倍になったという結果が得られました.いろいろな書籍でも引用されている実験ですから何処かで読んだこともあると思います.この結果を踏まえてプロクター&ギャンブルなどの企業が品種を絞ったところ,確かに売り上げが向上したということです.

私もこの実験は知っていましたが,品数が多いことでAmazonは売り上げを伸ばしているではないかと疑問に思っていました.この疑問がこの本を読んで解けました.Amazonで買い物をする客は何が欲しいかがすでに決まっていることが多いというのがその理由です.確かにレアな本やCDなどは真っ先にAmazonで探します.

Amazonでは食料品や電気製品なども売っているので,それらの商品に対してはロングテールは弊害となるのかもしれません.けれども,ものによってはAmzonは言われるほどにはロングテールではないように感じます.例えば,「コードバン 靴」で全てのジャンルで検索すると313件あります.一方,苦戦を報道されている楽天では2064件もあります.個人的にも楽天の方がうんざりするほど,しかも似たような商品数が多いように感じます.個人商店の寄せ集めですから商品がかぶるのは仕方ないとしても,色違いやサイズ違いでも1件として表示されるのは無駄に検索件数が多くなるだけです.もしかしたら,Amzonは「ジャムの実験」を意識して上がってくる検索件数を少なくする努力をしていのかもしれません.楽天はもう少し検索結果を購入者にうんざりさせない工夫が必要でしょう.

話が脱線しました.「JMPではじめる統計的問題解決」ではロングテールを切り捨ててJMPの20%を手っ取り早く問題解決をしたい人を対象にしていると書いたので,やはりロングテールを拾うことができる書籍も必要かと思った次第です.その場合は目的がはっきりしている人に素早く必要な情報を提供できる工夫が必要ですね.今のJMPのマニュアルはロングテールではあるけれど,この工夫がなされていないように思います.
書評から大幅に脱線してしまいましたので続きは来週にでも.

統計的問題解決研究所

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