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「産業に生かすJMP」参加報告

覚え書き

「産業に生かすJMP」と題したSAS社主催の事例セミナーに参加してきました.講演者のBill Worleyさんは化学畑の技術者としてのキャリアが長く,米国SAS社の前にはP&GやBASFにいらしたというキャリアをお持ちです.Technical Enablement Engineerという役職はアプリケーション・エンジニアのようなものなのでしょうか.化学者の立場からというサブタイトルもあってか,化学関連の会社からの参加者が多かったようです.当初はもっと化学寄りに専門的な内容かと思っていたのですが,JMPスターターの説明があったり,「エクセルからデータを持ってくる方法は三つあるけど,それらを知っているかい」という質問を皆さんに出されたりして,十分初心者でもフォローできる内容でした.因みに,この質問の答えはおわかりでしょうか?

1.まずはデータをコピーアンドペーストすることです.ペーストのときに列名とともにペーストを指定するのを忘れずに.
2.エクセルのJMPメニューを使う方法が二つ目の方法です.エクセルのレイアウトによっては環境設定の各種数値を調整することが必要となります.
3.そして最後に「統計的問題解決入門」でも紹介したエクセルwizardです.

それで知ったのですが,エクセルwizardは英語版ではEXCEL import wizardなんですね.エクセルwizardというとエクセル名人のような意味合いなので,なんか変だなとは思っていました.日本語版ではおそらく文字幅に起因する視認性を優先したのでしょう.漢字フォントを使う我々の場合,どうしてもフォントサイズが大きくなってしまいます.(余談ですが,万年筆のニブも日本製のものは外国製に比べて細くなっています.例えば,ペリカンのFはパイロットではM相当です.手帳に漢字を書くのにはペリカンのF(細字)では厳しいです.)

英語が苦手な人でも今回のセミナーは逐次通訳付きでなので十分理解できるレベルでしたが,JMPの画面は英語版のままでした. John SallさんのSummitの講演などではSAS Japanの人が二画面あるうちの片面で日本語版の画面を出したりしていますが,操作をリアルタイムに真似しなければならず,シンクロさせるのに苦労さなっています.
今回のセミナーで英語版のJMPの画面を見ると,いろいろな違いにあらためて気づきました.「統計的問題解決入門」でも「二変量の関係」は「Fit Y by X」であるとかを紹介していますが,なるほどと思ったのが,グラフビルダーのボタンです.

ご存知のように設定パネルには左から「元に戻す」「やり直し」「終了」という三つのボタンが並んでいますが,これらは英語版では「Undo」「Start Over」「Done」となっています.正直にお話ししますと,今だにUndoするつもりで「やり直し」ボタンを押してしまうのですが,この点は英語表記の方がわかりやすいですね.
JMPの表記に限ったことではないのですが,英語表記を知ってその正確な意味がわかるような例がたくさんあります.例えば,「拡張計画」は「Augment Design」です.拡張はAugmentの一つの形態であって,例えばaugment children’s performance などと言ったりします.日本語にない言葉なのでこれは仕方ないのかもしれません.

セミナーの話に戻りますと,先ほどのエクセルwizardのところでは,10000行より多いデータで使うことを推奨されていたり,寄率与と自由度調整済み寄与率との差は小さい方が望ましいという説明ではその値は0.1%以下という値を示していたり,具体的な数字を出してくるあたりにBillさんが実務家であるという印象を受けました.具体的な数字についての質問は私もよく受けるのですが,これがなかなか難しいところです.多変量のデータ分析に経験がそれほど多くはない私がVIFはいくつ以下であればいいのかと聞かれても,ものの本にはということをお伝えするのがせいぜいです.一方で,多くの経験がある実験計画では,例えばモデル寄与率について聞かれれば,計測精度や実験環境にもよりますが,具体的な数字を出してお答えできます.

一つ気になったのは,カスタム計画を作成する際に,実験数がリソースよりも多い場合に「if possible」(日本版では「必要な場合のみ」)を適用せよと言われていたことです.私はこれには反対です.「必要な場合のみ」はそのリスク(交絡)を知った上で最後の手段としてであれば「あり」ですが,とりあえず『RSM』で効果を仮定して実験数が多ければ「必要な場合」にするというのは,交絡がグシャグシャになって,わけがわからなくなる可能性大です.Billさんの経験からはそれでうまくいったこともあったのかもしれません.この点についてはご本人にメールで確認してみようと思っています.

それではまた.

統計的問題解決研究所

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