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DOEは斜めから学べ

覚え書き

誰か訪れる人がいるのだろうかと思って始めたこのブログですが,オーム社からサポートファイルをダウンロードされた方もいらっしゃるようで,少なくとも書籍を読んでくださった人がURLを拾いに来てくださっているようです.ご面倒をおかけいたしまして申し訳ございませんが,本当にありがたいことです.書籍にアドレスを直接書かなかったのは変更等に柔軟に対応できるからです.実際に,当初はGoogle Driveに置く予定にしていましたけれど,会社からではアクセスできないケースもあったりしたので,急遽オーム社に置き場所を作ってもらいました.

URLを拾うついでにそれ以外のブログ記事を読まれる方もいらっしゃかもしれませんので,過去の記事も読み返してみました.今まで誰の目にも触れることはないだろうと気楽に書いていたのですが,色々と訂正したいこともあります.明らかな間違いは既に修正しておきました.例えば,「JMPの提示する最適実験数で実験すると誤差の自由度は0になってしまいます.」というのはもちろん,「JMPの提示する最小実験数で実験すると誤差の自由度は0になってしまいます.」の書き間違いです.

他にも誤解を招くような記事もありました,池上彰,佐藤優(2016)『僕らが毎日やっている最強の読み方』東洋経済新報社を紹介した記事では批判めいたことを書いていますが,幾つかの学びを得たという点では読んでよかった本です.例えば,池上さんが,情報をくれるのは斜めの人間関係であると言われているのは全く同じ思いです.NHKに新米記者の頃,その世界でのいろいろな情報を教えてくれたのはNHKの先輩ではなく,読売新聞など他社の先輩たちだったということです.後輩とはいえ同じ会社に属していればそれには競争があるからです.もちろん,他社との間にも競争はありますが,成果として「特ダネ」という非常にわかりやすい指標がある会社では,後輩をライバルとして意識せざるを得ないという気持ちはわかります.

少なくとも専門分野に限っては,技術者の世界ではコンプライアンス遵守の観点から斜めの人間関係は築きにくいものです.いわゆる独占禁止法では競合他社との情報交換は第三条(事業者は,私的独占又は不当な取引制限をしてはならない.)に抵触する状況証拠と見做されるおそれがあるからです.かといって,縦の人間関係においても池上さんの場合のような状況があります.自分の経験からは後輩をライバルと思ったことはありませんが,それは仕事が細分化しすぎていて張り合うことがなかったからでしょう.とはいえ,後輩に何かを積極的に教えるという意識は希薄であったことも正直なところです.今でこそ人に教えることを生業の一部としていますが,当時は自分の分野の勉強に精一杯で,とても後輩の面倒を見ている余裕はありませんでした.こと専門分野に限っては,技術者の教育的な情報交流には縦も斜めも障害があるのです.

一方,統計学やデータ処理それにDOEといった(どの分野にでも有効という意味で)一般的な知識においても,(後輩に教えるという)縦の情報の流れに障害になっていることがあります.それは上司の存在です.人は自分が教えられたように教えることを好みます.こと教育については保守的であるものです.聞いた話なので,どこの会社とは言いませんが,ある技術者が後輩に実験計画を教えたところ,その後輩は上司に「そんなことで遊ぶな」と叱責されたそうです.KKDタイプの技術者を上司に持つと部下はDOEもままならないのです.

ところが,これが社外の人間に教えられたことであれば,異文化として受け入れてもらいやすいのです.DOEは受け入れられない上司であっても,それが舶来のものであればありがたがるというのは,さすがに新しいものには興味があるという技術者魂は備わっているからでしょうか.これが日本特有なことなのかはわかりませんが,いずれにせよ,日本ではDOEを学ぶには斜めからが容易なようですとはいえ,一般分野といえども斜めの人間関係を築くのは今のご時世では難しい面があります.他に探すとすれば,斜めから学ぶ機会としては学会がその一つの手段ですね.代表的なところではJSQC(日本品質管理学会)がありますが,なぜか土曜日に開催されるので通常の会社員には参加しにくいし,正直申しまして産業分野の技術者の参考になる発表は少ないと思います.先にお知らせしましたDiscovery Summitが斜めから学べる場になるようにしていけたらと思っています,

それではまた.

統計的問題解決研究所

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