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実験計画とハンディキャップ

実験計画

実験計画に失敗は欠かせないという趣旨のことを書いたけど,もう一つ欠かせないと思っていものがあります.それはタイトルにあるようにハンディキャップです.ともに逆風という意味では同じですけど,ハンディキャップには生得的なものというイメージがあります.ここでは,生まれながらのということの意味は,上司や会社との関係性で実験計画が実施しにくいということと解釈してください.このハンディキャップを乗り越えたところに成功があるということでは,失敗と同じです.

西村由紀恵というピアニストがいます.演奏者としてだけでなく作曲家として素晴らしい作品をたくさん書かれています.名前は知らない人でも彼女のメロディはきっとどこかで聞いたことがあるはずです.この人は手が小さいことが悩みでした.ラフマニノフの曲なんかで特に顕著なんですが,オクターブが完全に同時に鳴らし切れるくらいの手の大きさが必要です.(写真を見たことがあるのですが,ラフマニノフはかなり手の大きい人でした.)

西村さんは手が小さいので,子供の頃はオクターブに指が届かなかったため,もっと狭い和音にアレンジしたりしていたようです.このとき曲の感じが変わることに気づき,それが今の作曲家としての芽生えだったとのこと.手が大きければ,今の作曲家としての西村由紀江さんはなかったかもしれません.おそらくこの体験があってだと思うのですが,後に「鍵盤のカルテット」という,両手足指が二本しかないという障害を持たれた人のために曲を書いています.これ4本の指だけで弾いてるの?と驚く曲ですので,機会があったら聞いてみてください.「ピアノスイッチ2」というアルバムに入っています.

これを書いていて,昔銀座のヤマハの店頭でミニコンサートをやられていて,一目で気に入りCDを買ったことを思い出しました.当時からタレント顔負けのアイドル性をお持ちでしたけど,実力は大したものです.

さて,実験計画でも,様々なハンディキャップを負った技術者から相談を受けることがあります.上司が認めてくれないというような環境についてか,マシンタイムや実験サンプルが確保できないとかのリソースについてのハンディキャップがほとんどです.前者の場合は,とにかく実験計画を作成するようにコメントしています.従来の条件出しを実すると見せかけて,実際には作成した実験計画を実施するのです.もちろん,一回では実施できないので,毎回同じ条件で1実験を入れておきます.その条件は中心点にすべきです.

例えば,5因子のRSMは最低実験数は22実験ですが,これに中心点を4つ加えると26実験です.これでもデフォルトの27実験よりは少ないです.この26実験を4回に分割して実験します.このとき必ず中心点は入れておくと,場が変わったことに対応できる場合があります.場というのはうまく説明するのが難しいのですが,サンプルの下地や製造装置の具合などを含むすべての共変量のことです.

そうして,知らぬ顔をして実験を4回実施すればいいのです.実験計画というから一部の人に抵抗されるのです.どうせ実験計画せずには失敗を活かせないので,それよりも多くの実験をすることになるのです.おそらく誰にも気づかれないはずです.

後者のリソースについてのハンディキャプについては来週続きを書く予定です.

それでは本日はこれにて.

統計的問題解決研究所

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