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Amazonでの「内容紹介」について思うこと

JMPではじめる統計的問題解決入門

『JMPではじめる統計的問題解決入門』がAmazonに登場したとしばらく前に書きましたが,そこに掲載されている内容紹介は以下のとおりです.

JMPを使った「仕事の流儀」の入門書!
実務に使える強力なアドインを初公開!
本書は、「消化の仕組みが理解できていなくても美味しく食事ができるのと同様、統計を理解できていなくても統計を使ってその恩恵にあずかることはできる」という考えの基、JMPによる統計的データ分析の方法を解説します。
JMPの入門書でもありますが、操作手順だけではなく、「どんなときに何をどう使うのか」、「なぜその手法が必要なのか」という背後にある考え方について重きを置き、問題に対処できる応用力を身につけることができます。
さらに、本書購入者は、実務に使える強力なアドインは本書購入者を対象にSAS社のサイトから入手できます.(お申込みフォームに所定の情報を入力していただくことが必要です) 原文ママ

これは,私が書いたものではなくて,オーム社の編集の方が本書の「はじめに」を参照して書かれたようです.(一部,日本語が変なのでオーム社経由で修正をお願いしているのですが,何しろあれだけの書籍数ですから修正に時間がかかるようです.)この内容紹介ですが,間違いではないのですけど,いささかミスリーディングがあるかもしれません.
「仕事の流儀」というと,どんな仕事にも通用するビジネス一般におけるハウツー的な本のようです.現代の技術者は「今までとは違う仕事」に向き合わなければならないので,そのためには「今までとは違う流儀」に従うべきというような意味のことを「はじめに」に書いています.ある意味では「仕事の流儀の入門書」ではあるかもしれませんが,あくまでも本書の対象読者は問題解決に挑む(あるいはその必要に迫られている)人を想定しました.

問題解決の入門ではあってもJMPの入門書と名乗るのも少しおこがましいかもしれません.本書ではある程度JMPの操作をご存知の方を前提にして,技術者が使いこなすべきJMPの機能を説明しているからです.とはいっても,「はじめてのJMP」という付属マニュアルの最初の三章(JMP12の日本語版ではp77まで)に目を通していただければそれ以外の参考書は不要ですし,JMP以前のデータ分析の一般的な手順にも言及していますので,入門書としてもお使いいただけるかとは思います.そもそもマニュアル本を書く気は全くありませんでした.世にあるJMP関連本がどちらかというとJMPを使った統計本で,それらはそれで価値があるとはいえ,JMPらしさという点では十分にはアピールできていないと考え,そこを埋めることを意図しました.そのために最新版のJMP13をもとにして書きました.(一度JMP12で書いた原稿を書き直しています.)

ミニマルなJMPの説明という割には本書はA5より大判で320ページと類書中ではボリュームがある本です.それはJMPの操作説明を対話式にしたことに加え,JMPとは直接関係ない話もいろいろ書かせていただいたからです.そもそも本書のオリジナル原稿は私が講演やセミナー等でお話ししたことをまとめたものなので,講演などでは聴衆を飽きさせないために入れるエピソードが数多挿入されていました.これでも随分と割愛しましたが,余計な説明が多すぎると感じる方もいらっしゃるでしょう.とはいえ,下手な「解説」よりも一つのうまい「格言」で目が開かれることもありますし,そこにはエピソード記憶として留めて欲しいいうメッセージがあります.

「実務に使える強力なアドイン」というのも大げさですが,間違いなくJMPの機能拡張として実験計画によるパラメータ設計に大いに役に立つものです.今回このアドインを読者限定とはいえ一般に公開できたことは社会に貢献できたと自負しています.とはいえ,JMPでデータ分析をするだけならば使いどころが限られてきますので,このアドインについては,その使いどころなどを後日もう少し紹介します.ブログを開設することで,従来よりも補足説明を加えることが容易にできるのは大変ありがたいです.

以上いろいろと書いたことは,書店でパラパラとページをめくれば判断つくはずですが,ネット販売ではそれも困難ですね.Amazonの「なか見!検索」もこの分野の本にはないものがほとんどです.このような事情で,特にAmazonでは書籍のレーティングが割れやすいのではないでしょうか.ネット書店で購入した本には思っていたのと違うという不満も出やすいですから.いわゆる当てが外れたというやつです.当てが外れたということに関しては常々思っていることがあるのですが,本日は長くなってしまったので次回にします.

統計的問題解決研究所

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