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コロナとシャトルラン

統計リテラシー

コロナどころではない世の中になってきました...先週もこんなこと書いたけど,外国の戦争は一時で済む(希望的観測)かもしれないけど,コロナはなにしろ2年以上に渡って社会は大きな影響を受けてきたから,それは今後も尾を引くだろうな.

コロナも戦争も,不思議なほど人々の対立を生んだという点で似ています.同じ事実を見ていても,つまり同じデータのもとでどうして正反対の結論が引き出されるのか.その一つの理由には,データに基づいて判断するということの質にあります.

データに基づくというのは,データを使ってということではなく,データに対峙するということなのです.ですから,一見データに基づいていても,1)その中身を理解していない2)データに騙されている3)データを都合よく解釈している に過ぎない場合があります.特に最近は1)の人々がSNS界隈に跋扈しています.ひどい場合は,データとは単にインフルエンサーの意見だったりとか,そういうのが独り歩きしてる.

2)も3)も実は同根です.2)の人々は知らないが故に不幸な目に合いますが,3)の人々は,自分の言いたいことを裏付けるデータを探して都合よく解釈し,多くの人の判断を狂わします.その結果人生も狂ってしまった人もチラホラ.頭がいい人も多いから説得力も高く,その意味ではこっちのほうが質が悪い.

『データサイエンス』でも取り上げた体力測定データは毎年チェックしているのですが,このデータを使って「コロナ自粛を続けるべきではない」と主張する記事があったので確認してみました.

スポーツ庁の「令和3年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果」にある「調査結果の総括」というPDFのp16には体力合計点の年次推移が載っています.体力合計点とは,それぞれの運動項目を,一定の基準でポイント化した値の合計です.そもそも,この体力のポイント化の妥当性も考える必要ありますが,ここではそれは置いときます.

確かに,令和3年度の合計点は過去に比べて大幅に下がっています.これを持って,このままでは子供の将来の健康が損なわれる,コロナで社会を自粛するよりも経済を回せしとの主張に繋がっていきます.誰もがこのグラフを見るとギョッとするばすで,それ故この主張にはとても説得力があります.因みに,私はこの主張にある程度は賛成はしていますが,このデータを持ち出すのはちょっと待てと言いたい.

それというのも,毎年このデータをウォッチしていたので,この体力合計点の低下はコロナによるものだけではないことを知っていたからです.この調査の2年前の結果もあります.「令和元年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果のポイントについて」というPDFのp2を見ると,折れ線グラフの一部を赤枠で囲って,小中学生ともに大きなポイントの低下が指摘されています.なるほど,このときからコロナの影響は出ていたのか..でもこれ令和元年12月の報告です.

コロナとは関係ない何らかの要因がここにあるのは明確ですね.コロナ元年の令和2年はこの調査は実施されていないので,コロナの影響で緩和されなかったとは言えます.もちろん,コロナの影響もあるのかもしれません.でもそれはこのデータからはわかりません.このポイントの低下率が種目によって異なっているので,それがヒントになるかもしれません.シャトルランは,上体起こしや反復横跳び,持久走とともに大きく低下した種目の一つです.

とはいえ,令和1年のデータでは,特に中学男子の持久走で低下が著しいのですが,コロナ下の令和3年ではそれが少しですが下げ止まってさえいます.やはり部活もできず自宅に籠っていることの影響はあるとは推察できますが,データはそれを物語っているでしょうか?その効果をこれから推定してみます.

それでは.

統計的問題解決研究所

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