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実務のデータ分析における交渉力

覚え書き
以前から予告していたように,本日は分析手法の交渉力についてお話しします.中々時間が取れなかったのですが,ようやく思っていたイラストが描けたので,それもお披露目します.このイラストは書籍に掲載する予定ですが,その際は手直しが入るかもしれません. 

版の古い間違った図を入れてしました.後日差し替えます.

実務のデータ分析ではそのゴールに「行動」があります.得られた「情報」をもとに「行動」しなければそのデータ分析は役に立ったとは言えません.そのためには人を動かす必要がありますが,何の根拠もなく人は動きません.メリットとデメリットを秤に載せて,その均衡が破たれたときに人は初めて行動します.




そこで必要になるのが交渉や折衝の場です.因みに,交渉と折衝の違いがわかりますか.交渉はお互いの意見に折り合いをつけて落とし所を見つけることです.一方,折衝とはお互いの意見とは別の着地点を見出すことです.いずれの場合でも,ステークホルダー(利害関係者)を説得したり納得してもらうことが必要になりますが,そのためには,自分の理解と相手の理解とが整合していることが重要です. 


よくあるデータ分析の入門書では,統計学やデータ分析に秀でた先輩や上司がいて,わかりやすく指導してくれたり適切なアドバイスをもらえたりする夢のようなストーリーが多いのですが,こういうケースは実務では稀ではないでしょうか.むしろ自分よりも相手の理解の方が経験が浅く知識レベルが低いような局面に苦労することが多いと思います.このような場合,実務のデータ分析では「行動」を意識して,相手の理解できる範囲で分析手法を選ぶことが重要です.冒頭の図を使ってこのことを説明します.


この図は,ある分析手法における自分の理解度と相手の理解度とを2軸にとった平面です.分析手法ごとにこの平面が異なることに注意してください.(この平面に分析手法がプロットされるわけではありません.)対角線上では自分と相手の理解度が釣り合うことになり,この線に近づくほどよりその分析手法は高い交渉力があるということになります.両者の理解力が釣り合うといっても,原点に近いほどお互いの理解度が低いので,より正しい意思決定のためには右上を目指すのが望ましいでしょう.(必ずしもそうとは限りませんけど.)


この図の黒丸で現在採用されている分析手法が示されているとします.対角線の下側に離れているので,この分析手法に対する相手の理解度は自分の理解度よりも低い状況です.この状況を改善するには図の白丸を目指す必要があります.そのためには,二つの方法があります.一つは相手が理解できるように丁寧に説明するという正攻法です.とはいえ,相手に理解してもらうには時間もかかるので,手っ取り早く相手に理解できる分析手法を選択することも1つの道です


例えば,自分が大学教養レベルで相手が高校レベルであれば「二変量の関係」や「一変量の分布」あるいは「パーティション」などの比較的難易度の低い分析手法の交渉力が高いでしょう.実務のデータ分析では難易度の高い手法が良いというわけではないと言っているだけですから,交渉力のある分析手法はもちろん各自の状況に合わせて工夫してみてください.

来週はまた関西方面に出かけます.それではまた.

統計的問題解決研究所

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