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統計リテラシーと恐竜

統計リテラシー

ようやくオミクロン株の流行がピークアウトしたようです.ここにきてますます明確になったのは,シミュレーションによる予測と称する類の研究が,単なる外挿に過ぎないということ.一月後に何万人の感染者が出る,などのような研究結果はマスコミに利用されることを意識して発表して欲しいものです.そして,外れたのならなぜ外れたのかを研究して,予測者の責任として次の予測に反映させてください.このことは予測に携わるものとしての自戒も込めています.

この点でも,AIによる予測には難しいところがあります.アルゴリズムにさも人格を与えることで,予測が外れてもAIをスケープゴートにすることが容易です.なぜ予測が外れたのかの研究も,その核に切り込むことも難しい.予想外のことが起こったから,という理由で片付けられてしまう.というより,それくらいしか結論できない.なぜかというとモデルの中身が見えないので.

更に,予測はあたらないのだ,ということを自虐的に世間に周知させることも研究者の務めかも知れません.それでも予測するのは,そうしないと先に進めないからであり,最悪シナリオを描くことで,その可能性に備えるためのシミュレーションなのだということを予測結果に添えるべきです.

地震予知はその点でうまく機能しているかもしれません.当たらないことは分かっているけど,それでも予測は必要ということはみんななんとなくわかっている.ところが,コロナの予測になると,それに怯えることが先行して,この点が見えなくなってしまう人も多いのです.

マスコミ報道の在り方も問題です.今なら「コロナ死ラッシュ」などと煽っているところもありますけど,感染者が増えてくればその中で亡くなられる方も増えるのはあたりまえで,死因とコロナ感染の因果関係が明確でないデータしか得られていない現状では,数で報道すると,統計リテラシーのない人には真実が伝わりません.

今のマスコミはクリックしてもらってなんぼという個人のアフィリエートブログに成り下がってしまったので,意図的にやっているのかもしれません.とはいえ,報道側に統計リテラシーを持っている人が多いようにも思えないので,無知が無知を増強していく構図になっているのが恐ろしいです.

因みに,読売新聞はこの点をしっかり報道していました.https://www.yomiuri.co.jp/national/20200614-OYT1T50084/ 厚労省のコロナ死の定義が混乱を招いている.このことは以前からも指摘されていました.誤嚥性肺炎で亡くなったとしても,死後に陽性判定されればコロナ死として扱われます.陽性率が上がっている今のタイミングでは,この定義のためにデータから事実を見ることが難しくなっています.データの力を無効にする,真に馬鹿げた定義です.

度々このブログでも言及している,米国の疫学者Sedgwickの“Standards are devices to keep the lazy mind from thinking.”という言葉がまさにこの状況を予言しています.役人が基準を設けるのを好むのは,まさに考えるのを怠けたいからです.しかもこの基準が考えずに決められたものであるならば,世の中に大きな混乱を引き起こすということがよくわかります.

私たちは,これを他山の石とすべきです.そして,自分の身の回りに基準が多すぎないかチェックし,その基準はよく考えて決定されているのか,更には,既存の基準に盲目的に従うことなく常に考えるようにしたいものです.

ここで統計リテラシーに話を戻すと,このような状況の中で必須な能力が統計リテラシーだと考えています.ごく最近まで,人類は統計リテラシーを持ち合わせていませんでした.統計学という学問そのものが他の分野と比べると大変新しいからです.ところが,今回のパンデミックのような重大イベントに際し,統計リテラシーを備えることが必須なことが明白になってきました.これから先は,統計リテラシーを備えた人間だけが生き残るのではないでしょうか.

それは白亜紀末絶滅した恐竜を想起させます.ご存知のように,定説では6550万年前にメキシコのユカタン半島北部に落ちたとされるチクシュルーブ隕石が気象変動を引き起こし,それが恐竜絶滅に繋がりました.

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いささか飛躍があるかもしれませんが,統計リテラシーを身につけている者のみが,コロナパンデミックという隕石が招いた混乱に生き残っていけるのはないかと考えています.ということで,そのためのチェックリストを紹介します.残念ながら,時間が来てしまったのでまた来週.なんかこのパターンが多くてすいません.このブログは毎週訪れて頂く類のものではないので,ご容赦ください.

それでは.

統計的問題解決研究所

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