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新型コロナを題材に補講します

JMPJMPではじめるデータサイエンス

本日は,新型コロナを題材に『JMPではじめるデータサイエンス』の補講をします.p54の『シロかクロか?」を開いてください.何かと話題になっているPCR検査について検査的中率を求めてみることにします.必要になるのは,偽陽性率と偽陰性率というPCR検査の性能と事前確率,即ち被験者が感染しているであろう確率です.最初に偽陽性率と偽陰性率を調べてみます.専門家が,口々にPCR検査は絶対ではないと言っているものの,それがどの程度なのか具体的な数字は見つけることができませんでした.

ウィルス検査の偽陽性率についての文献はインターネット検索のレベルでもいくつか上がってきますが,例えば,この文献では,PCR検査を上位において,RSウィルスやノロウィルスを対象としたイムのクロマトグラフィーなどの迅速検査の精度を比較検証しています.考えてみれば,いかなる検査でも上位と比較することなしには精度の検証は困難です.検査キットが何種類もあったり,手技のレベルに大きく依存する検査ですから,トレーサビリティも確立されていないはずです.おそらく,PCR検査の偽陽性率の具体的な数字は,まだ出せないのではないでしょうか.

もちろん,PCR検査は超高感度な手法なのは,間違いありませんが,その超高感度が災いして,サンプルがコンタミして偽陽性が出やすいことが知られています.また,特に今回の新型コロナウィルスは肺胞上皮で増殖することが確認されていて,サンプルを通常のインフルエンザのように喉から取るのでは,見逃しやすく,これが偽陰性が多い理由の一つと言われています.鼻から取る方が効率は良いようですが,そうすると(被験者のくしゃみなどで)医者が感染するリスクが高くなってしまうとのことです.新しいウィルスですから,まだ未知のことが多いようです.

そこで,少し前の厚労省のデータをもとに推察します.それによれば,チャーター便帰国者829人のうち,陽性者が15人で無症状者が4人でした.チャーター便帰国者以外の感染者といわゆる濃厚接触した人など1017人のうち,陽性者が140人でそのうち無症状者が12でした.無症状者の割合は全体でおよそ10%になります.ここで,これは少し無理がある仮定ということは承知で,無症状者が偽陽性者と見なして,偽陽性率を10%とします.報道から,陰性者から後日陽性反応が出ているようなので,偽陰性率も0%ではないのは間違いなく,仮に1%とします.(この二つの確率は納得のいく値をおいて試行錯誤してみてください.)

もう一つ必要なのが,事前確率(有病率)です.厚労省のデータから陽性者の割合はチャーター便帰国者以外で14%でチャーター便帰国者で1.8%となります.それぞれを高リスク群と準低リスク群とみなし,高リスク群での感染率を15%,低リスク群を1%とします.1%としたのは1.8%よりは低いだろうと考えたからで,現在の状況ではオーバーエスティメイトであることは頭に留めておいてください.

さて.これで準備が整いました.上記の情報をもとにp55の樹形図を描いてみてください.それからJMPのデータテーブルにその結果を入力します.最初に高リスク群から行きます.このようなテーブルが作れましたでしょうか.

作れたら「二変量の関係」で「検査」を『Y』,「感染」を『X』,「度数」を『度数』に割り当ててから『OK』します.レポートの「モザイク図」を冒頭に示しました.今PCR検査で陽性となった人がこの図の青色で示されています.このうち本当に感染していた人は右上の部分です.この割合がどの程度かは「分割表」の「陽性」の「列%」を見れば良いのです.

その結果は,63.83%となっています.陽性的中率が6割というのは以外に低いと思いませんか.

実はここからが本題で,低リスク群の感染率を1%として陽性的中率はどの程度になるかを想像してみてください.その結果がこちらです.

陽性的中率は半分以下に下がります.コイン投げよりも低くなるということは検査する意味はもはやありません.

更に,低リスク群の感染率を1%としましたが,これは明らかにオーバーエスティメイトであることも多い出してください.現実にはもっと低く,1000人に1人としてみます.その結果がこちらです.

8.33%の陽性的中率です.もちろん,実際の検査の精度は不明ですが,おそらくこれよりも低くなるように思います.

インフルエンザの症状が出た程度では高リスク群でないのは間違いなく,いたずらにPCR検査を受けた場合のデメリットは覚悟しておく必要があります.PCR検査のメリットは理解しやすいのですが,的中しなかった場合のデメリットも覚悟しなければなりません.海外では感染疑いをかけられたみ感染者が自殺するという悲劇も起きています.

TwitterでPCR検査してくれないと嘆く人には,この事実を丁寧に説明することが大切です.科学の心得があるものが,そうでない人にわかりやすく説明していくことの必要性は311のときにも痛切に感じました.JMPerの皆さん,周囲の人々,ご家族や知り合いにJMPのグラフを見せて説明してあげてください.

それでは本日はこれまで.

P.S.
これを書いた後にこの記事を見ました.そこには,こう書かれています.

引用ここから
PCR検査が感度90%、特異度90%であったとする(こんな精度の検査はありえないが)。
引用ここまで

感度と特異度は,それぞれ(1-偽陰性率)と(1-偽陽性率)のことです.ザッと斜め読みしただけですが,このブログとは逆のロジックではありますが,同じような議論がされているようです.

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