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(2000年の)アメリカ大統領選挙をJMPで見る

統計リテラシー

アメリカの大統領選挙の結果はどうもすっきりしない感じですね.最新の統計学を駆使した予測が当たったとも言えるし,その一方で統計学は今回の結果に明らかな異常を捉えているみたい.組織的な不正があったという陰謀論も取り沙汰されているけど,「Pennsylvania 2020 Voting Analysis Report」という11月16日にリリースされたレポートを読むと,何かはあったような気はします.このレポートのグラフにJMPが使われてるというのを,SASにいらしたDOEの大家,Louise Valenteさんに教えてもらったので読んでみました.

このレポートはScribdにあります.日本ではなじみがないけど,書籍のネットフリックスとでも言ったらいいのかな.アメリカでは利用者が結構いるオンライン購読サービスです.会員登録すれば,これ以外にもいろいろ30日間無料でダウンロードできます.そこまでして読む必要はないと思うけど,一応URLだけ貼っときます.

確かに見慣れたJMPのグラフが使われていて,こういうデータ探索にはJMPが向いてるんだなと実感します.著者が複数いるんだけど,全員がJMPなんですね.データが入手出来たら,そのうちブログでもフォローしてみようかな.

このレポートだけど,それら複数の統計の専門家が今回のPA(ペンシルバニア州)の選挙結果のデータを検証した結果です.そして,その複数の専門家の全員がこのデータに対して複数の疑義を見出し,すべて同じ結論に達したということです.ペンシルバニア州には67の郡があるんだけど,そのうち11郡で(通常では起こりえないような)異常を見つけています.分布の歪とかの類.

データに異常があってもおかしくはないけど,それらすべてがバイデン氏にとって有利に働く異常だということと,関係する票(即ち疑わしい票)は30万票前後だということが問題ですね.場合によっては,勝敗がひっくり返る可能性もあるわけだから.このレポートの結論としては,選挙に不正があったとは断定できないけど,ペンシルバニア州の当該市民の意思を正確に反映している可能性は非常に低いとしてます.

本当に不正があったか否かはさておき,このグタグタさに2000年の大統領選挙を思い出してます.あのときは民主党のゴアと共和党のブッシュの一騎打ちだったわけだけど,フロリダ州の集計で問題がありました.特に,Palm Beach郡の集計で問題があったことが有名ですよね.バタフライと呼ばれる投票方式がその原因だったと言います.この話は,その後に出版された統計学の教科書(大学初年級の入門書だけど1000ページ近くあった)にコラムで掲載されていたのでよく覚えてます.

アメリカって日本と違って,郡単位で行政にいろいろな違いがあって,選挙方式なんかもその一つなんですよね.ここに書かれているように,5種類ある投票方式のなかで「バタフライ」はパンチカード方式の一種で,この図のような投票用紙に穴をあける(たしか鉛筆のようなものだったと思う)という原始的な方式なんです.それを光学的に読み取るので,紙くずが詰まったりしてもうまく読み取れないので,信頼性は低いことは知られていました.そして,2000年のPalm Beach郡の投票用紙がこれです.上述の教科書にも全く同じ写真が掲載されていました.

この用紙でGoreに投票しようと思った人が見誤って,上から2番目に穴をあけてしまったのではないかと言われてます.(本当は上から3番目です.)その結果,その票はGoreではなくてBuchananに行ってしまった.このことについて書かれている報告も上げておくけど,このFigure1を見てもらうと状況がはっきりするかも.(PAっていうのがPalm Beach郡です.)

v. 3.3,

ここではBuchananの予測値と実測値とを比較してモデル残渣で議論してるけど,別にモデリングしなくても異常だということはわかる.因みに,Buchananは共和党でしかも有力候補ではなかったというのがポイント.共和党と民主党との得票率はどの郡でも一定範囲にばらつくという仮説の元,このデータをグラフビルダーで示してみます.(本日の題名にアメリカ大統領選挙をJMPで見るって書いちゃったから無理やりJMPを持ち出したんだけど,この元データを探すのが大変だった.)明らかにPalm Beach郡で何か起こったのか?という感じだよね.

外れ値を見つけたら,直ちに削除するのではなくてその発生原因を調査することが最重要であるといことがこの事例から学べます.このときのグダグダの反省から,「2002年投票制度改善法」が成立して,補助金が出るようになって「バタフライ」を廃止する州が増えたそうです.アメリカ社会に変化をもたらす大統領選挙は,今回はどのような変化をもたらすのかな?そして私たちにどのような学びを授けてくれるのか?

それでは,また.

統計的問題解決研究所

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