僕とサブローちゃんが統計の本になりました!

Fallout4・日本語訳の変な箇所と修正案

クリアしても変わらず楽しいFallout4ですが、違和感を感じた会話の原文を参照してみたところ、本来の意味を損なっている部分が少なからずあったので改善案と共に書いておくことにします。逆の意味になっていたり、意味不明だったりして「?」と思いながら遊んではもったいないし、不当に反感を抱かれるNPCもかわいそうですから。

注意:情報の性質上、ネタバレ要素があります。できるだけ不必要なネタバレは避ける努力をしているつもりですが、あらかじめご了承ください。

Fallout4・日本語訳の変な箇所と修正案

最初に断っておきますが、僕はゲームの翻訳者さんたちには同情的です。ろくな資料もなく、適当に(適切に、ではない)分断された文章の束を全体像が見えないままキツい納期で日本語にするという作業を強いられていることが珍しくない様子だからです。

称賛に値するゲーム翻訳というと、今のところGod of Warくらいしか思いつきません。

このゲームに関しては、思わず唸ってしまうような洗練された訳もあるのに、中学生のような初歩的なミスも散見されるので、アシスタントか自動翻訳が下訳したものを先生が直す時に目こぼししたようにも見え、ますます納期がキツかった感が漂っています。

なので、細かな誤訳などをいちいち論うことはしたくないし、しません。一人のVault住民として、同志たちが楽しむための障害となっていそうな箇所についてのみ、Fallout4の名誉のためにも訂正したいと思うだけです。

日本語訳の変な箇所と改善案

では漫画に描いたものから。

ガービーに友好的ではないと言われる

助けを求める声に応えてレイダーを掃討した後初めて対面し、

「助けになれてよかった」(Glad to help.)

と言うナイスガイな主人公に対するガービーの返し。

日本語訳「それが本当なら、もっと友好的だとありがたいんだが」

英語字幕:Well if that’s true, we could use some more good will. 

は?命がけで助けた(てか、何回か死んだ)のに、態度を咎められるような筋合いはないのでビックリ。原文は控えめに次の助力を頼めるか尋ねています。use one’s helpで「助けてもらう」という表現はこの作品で多用されるので、ここも分かりそうなものですが。

→改善案「その言葉が本当なら、もう少しご好意に甘えてもいいだろうか。」

こんな感じでは。不当にガービーの第一印象が悪くなってかわいそう。

ファーザーの訳が一部で「神父」となっている

日本語訳「神父は」

英語字幕:Father

さんざん言われていると思いますが、オウンゴール並に重症なのでスルーできません。

→改善案「ファーザーは」

本人も言っているように一種のタイトルなので、そのままファーザーとすべき。てか、他はそうなっているので自動翻訳を直し忘れた、とかかもしれません。それに、これだけの文章量です。大勢で分担しているはずなのでバラつきがあるのはしょうがないのかも。

レイダーの煽り文句1

日本語訳「顔を見せて。私は…」

英語字幕:Show your face. I dare ya!

日本語音声は「私は」で終わってしまうので、「私は」何なのか気になっていました。原文のdare you が落ちています。声が可愛いレイダーのネーチャンならともかく、ムサいゴロツキ野郎まで命令形の”show”が「見せて」になってしまい、無意味に優しくてアンバランスです。煽り文句なので

→改善案「そのツラ見せてみろ!できるもんならな!」

あたりが妥当でしょうか。

レイダーの煽り文句2

日本語訳「チビのビッチ」

英語字幕:little bitch

littleはbitchをさらに貶めるための言葉で「小物」のようなことを言いたいだけであって、身長は関係ありません。女性主人公は決して小さくはないので「?」と思いました。

→改善案「雑魚ビッチ、クソビッチ」

あたり?

何でも屋トムのつぶやき

日本語訳「みんな”君は化学を激しく打ち過ぎている”。しかし…」

英語字幕:Everyone’s all, “You’re(原文ママ) been hitting the chems way too hard.” But…

これはランダムに出るつぶやきの一つです。僕の場合は初対面で言われ、「化学」はchemistryの直訳だと分かりますが、直接話法の「君」が誰なのかよくわからず、さらに「みんな」の動詞が無いので次の文とのつながりも悪いため全体的に意味不明で、

「え?僕が?嫌がるコンパニオン多いからバフ系のクスリ使わないけど?もしかして回復のスティムパックもヤク扱いなの?」

と、頭を抱えました。原文を見るとトム自身が他の人にクスリをキメすぎと言われていることがハッキリします。

→改善案「みんなが”君はクスリをやりすぎだ!”って言うけど…

あるいは

→改善案「みんなは僕がクスリをやりすぎてるって言うけど…

いっそ間接話法としてもよさそう。

英語音声では声優さんが直接話法とわかる楽しい演技をしているので、直接話法が活きています。日本語音声は翻訳が微妙なので声優さんも困ってしまった感じ。

シルバー・シュラウドとしてハンコックと最後に交わす会話

日本語訳「この会話に意味があるのかわからなくなってきた」

ちょっと日本語がうろ覚えですが、こんな日本語でした。

「この会話に意味はあるのか」

だったかも?

英語字幕:I’m gonna miss these little conversations.

動詞missの意味をミスっている例。ここが違うとハンコックによるシュラウドコスプレに対する評価が真逆になってしまうので残念な誤訳。

→改善案「このシャレた会話もこれで終わりかと思うと寂しくなるな」

ハンコックはシュラウドになりきっている主人公との会話を終始大いに楽しんでいたはずなので最後に上記の日本語訳ではおかしいんです。ドン引かれているみたいですから。

デイジーにミッション完了を報告する時の会話

日本語訳「本を落としてしまった」

英語字幕:I’ve dropped off your book.

「無くして」だったかもしれません。ここ、記録が無くてすみません。

dropを文字通り「落とす」と訳している初歩的な誤訳。続くデイジーの

「えへへ、200年遅れちゃったけどね」

と繋がらないから、おかしいと気づいてほしかったです。

→改善案「君の本、返しといたよ」

ちゃんと返却器に入れたのに無くしたような言い方はないですよね。

Blind Betrayal 直前にダンスが主人公を先に帰す場面

日本語訳「クビだ、ナイト」

クエストの目的を果たし、ダンスがそこに残ると言い出した時、さらに話しかけると言うセリフ。

英語字幕:You’re dismissed, knight.

これは誤訳ではなく勇み足。翻訳者は、なぜかシナリオを読み込んでくれたのはいいですが、その努力が裏目に出てサプライズであるはずの演出をスポイルしてしまってます。この場面ではダンスに不審な感じは一切なく、その後マクソンに報告して青天の霹靂となるべきところなので、不穏な予感をリークするのは、やりすぎ。

コンパニオンになっているのに現地解散、という事態が異常ではないという前例として、わざわざストロング砦制圧後の現地解散という伏線を張っている原作の苦労を台無しにした罪は重いです。あの場所では解散した後すぐまた話しかけると合流できるので、それをやっていれば今回は違う、とはわかります。他の箇所の「ミス」は人間なのでしょうがないですが、踏み込みすぎは擁護できません。

→改善案「解散だ、ナイト」

ストロング砦と一字一句同じ決まり文句が使われている以上、上記のように同じ訳にすべきでしょう。

ダンス関係でもう一つ。

ダンスと親密になってから解散する時のセリフ

日本語訳「君にもしものことがあったら、何をしていいかわからない」

英語字幕:If anything happens to you, I honestly don’t know what I’d do.

日本語訳だと、このセリフは迷える子羊のようで、元上官の言葉としては情けない限りです。多分主文の助動詞をshouldと取ってこう訳したと思うのですが、honestlyとの関係でwouldと解釈して

→改善案「君にもしものことがあったら、自分でも正直何をしでかすかわからない」

(自暴自棄になる、過剰に報復するなどの意味で)

の方が妥当では。ダンスの性格として激情家でかつ愛情深い面が垣間見える興味深いセリフなので、微妙にしておくにはもったいないです。Blind Betrayal以降のダンスは以前以後の落差が劇的ですが、かわいそうな立場な上に不当に台詞までトホホではあんまりなので訂正せずにいられません。

if anything happensをそのまま「何かあったら」でも問題ないのに「もしものことがあったら」と、自然な訳をつけてくれているのになー。

以上、膨大な文章の中で目についた箇所に文句をつけるだけではフェアじゃありませんので、思わず唸ってしまった素晴らしい訳についても書きたいと思います。

素晴らしい日本語訳

親しくなるとダンスの二人称が変化する。

初対面では「市民」とか「お前」などと呼ばれて大変不愉快ですが、行動を共にするようになると割とすぐに当初の失礼な態度を詫びてきます。その時以降、呼び方が「君」に変わります。

このような日本人なら普通に行っている使い分けを反映させてくれるゲームの翻訳は、残念ながら、あまり見かけません。僕は日本語の一人称、二人称の豊富なところが大好きなので、とても嬉しいです。主人公はじめ多くのNPCの一人称は俺ですし、BOSメンバーは軍人らしく「貴様」を使うのもナイス。

Dr. アヨがコーサーについて語るセリフ

「早い話、えげつない性能だ」

In a word, coursers are relentless.

これ、すごいなーって思いました。ある意味、原文よりアヨらしくないですか?そのまま訳すと「つまり、コーサーは残忍で容赦を知らない」ですが、「えげつない」という実にコナレた形容詞に加えて「性能」とすることで、アヨが人造人間を生産された道具とみなしているクソ野郎だということが少ない言葉でハッキリと伝わります。

こんな素晴らしい訳があるのに一方では…まあいいや。直訳はまだいいんです。意味を察することができるので。意味不明とか違う意味になっちゃっているのは困りますよね。

次はバグとそれぞれの対処法について書きたいと思います。

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