僕とサブローちゃんが統計の本になりました!

ホロウナイト漫画:兄ちゃんと僕と(ネタバレ注意)

初代器。彼のこれまでの人生は、それは壮絶なものです。生まれたその時から世にも恐ろしい悪意を内包することだけを期待され、訓練され、そして王国を救うための犠牲となりました。それも、ただ命を差し出すよりも酷い、邪悪な神の怒りを自分の中に未来永劫抱え込むという地獄の責め苦のような務めです。

都には彼の像が建てられ、その美しい自己犠牲が称賛されていますが、兄はそれで満足だったのでしょうか。何の疑問も抱かなかったのでしょうか。虚無だから、何も感じないでしょうか?

アビスで虚無を吸いながら生まれた兄の心は虚ろなはずでした。しかし父王との絆を通して感情を持つに至り、それで器としての使命を果たせなくなりました。そして主人公が呼ばれたわけです。

ホロウナイト漫画:兄ちゃんと僕と(ネタバレ注意)

なぜ感情を持つと器として機能しなくなるのか。それは、汚染は心の病と言われているように、まず心を侵蝕するものだから。心が完全に空っぽであれば、ラディアンスの悪意、あるいは甘い囁き?は届かない、ということでしょう。

ぞっとするような不気味で残酷な器決定レースを勝ち抜いた息子を宿敵ラディアンスに対する最終兵器として育成しながら、父親らしい愛情の発露を抑えられなかった蒼白い王。その思い出を宮殿の奥深く、ありとあらゆる凶悪なトラップの先に隠したからには、それが許されないことであったと自覚していたのでしょう。

とはいえ、その思い出は決して忌々しい失敗として隠蔽されているのではなく、美しい記憶としてそこにあります。王はそれを為政者としては後悔、あるいは恥じていたかもしれませんが、父親としては大切にしていたということでしょう。

苦難の道を抜けると、そうした事情がわかります。でも、

見せる相手は主人公じゃないだろー!

と、思いませんか?それは兄にこそ見せてあげてください。短い間ではあっても父子として幸せな時を過ごした記憶と共に長い間闇の中に吊るされて、絶え間なく心を攻撃してくるラディアンスの脅威に耐えていた兄。そもそもラディアンスはどうやって哀れな犠牲者を攻撃するでしょう。

ノスクが獲物の大事な相手を利用したように、虚無に近い器の弱い部分、父に対する愛情、を突いてくるんじゃないかと僕は思うんです。他には取り付く島が多分なさそうですし。

「卑怯なお前の父親は何も知らない子供だったお前を英雄とおだて、まんまと嫌な役目を押し付けたのだぞ。このような暗く湿った場所で終わりのない時を過ごす気分はどうだ。奴が憎いだろう。復讐するなら手を貸してやらんでもない。どうだ、ここを出られるばかりか支配者になることさえ夢ではない。」

兄の心にさざ波が立ちますが、必死にそれを否定したでしょう。

「そんなはずはない。父は静かではあったけれど、愛情を向けてくれた。気のせいではなく心が通い合っていたんだ。利用されていただけなんて、違う。」

単にラディアンスの力が強まってついに器の力を超えた、というだけかもしれませんが上記のような悪魔の囁きが介在した方が怖いので、そのように想像しています。

やがて僅差で器レースに敗れて「破棄された器」である弟が現れ、手に手を取って邪悪な神を葬った時、兄はおぞましい役目からは解放されましたが、心の底に沈んだ黒い疑惑に対する答えは得られないまま。

だから見てもらいたいんです、兄に父のあの記憶を。そうしたら、愛情で結ばれていたことは紛れもない真実で、父もまたその思い出を大切にしていた、ということが実感できるでしょう。父はもうこの世にいませんが、兄弟はいるということに気付いてほしい。また前を向いて歩き出してほしいんです。

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