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ホロウナイト: 夢見の釘で夢拾い(3)灯台事件の謎

断片的で翻訳しにくい夢のセリフの意味不明な箇所について適切な訳を考えるこのシリーズも3回目。これまでの、キャンプで力尽きた虫やノスクの巣への累々と続く遺骸の最後の思いは、意味が分かると状況をより楽しめるという類のものでした。夢の言葉なしでも何が起きたか察せられるるので。今回は、夢の日本語が意味不明なために物語上重要なシーン自体の意味が不明確になっている箇所、アビスの灯台でひっそり倒れている虫の夢に焦点を当てたいと思います。

アビスに入ると、まず暗くてビビり、どこまで続くとも知れない穴の深さに、さらにビビります。そして不気味な環境音や1発で2ダメージをもたらす影の攻撃に怯えながら進んでいくと、洞穴の中に突如として大きな灯台が姿を現します。上ろうとすると、次々と影が襲ってきます。時には上の足場に乗った途端、同時に3体現れて包囲を狭めて来たりもします。灯台の最上階には、よほど重要な何かがあるに違いない、そう思いますよね。

ところが、入ってみれば暗い部屋にレバーがひとつ。倒すと灯りが着きますが、それだけ。外に出ると、灯台のまわりにはもう影が発生しないことが分かります。部屋に戻ってよく見回すと、一匹の虫が倒れています。服装からして宮殿にいるタイプのようです。都をうろつく貴族連中よりも階級が上の。それがなぜこんなところに?そこで夢見の釘です。

…消すというのか…それは...
王よ、すみません…海が呼んでいる…

状況がわかりませんよね。日本語としても意味不明です。初回は首をひねりながらも奥に進み、影の衣をもらって帰ってしまったが、どうにも気になります。そこで英語ではどうなっているか見てみると、

Turn it off? Cannot…
My king. I’m sorry… The sea calls…

やはり断片的で分かりにくいものの、少なくとも1行目は消すように命じられて、それを拒否する言葉だというのは議論の余地がないと思います。これだけでも事情がだいぶ見えてきます。2行目で、この会話の相手が王だと判明します。

滅多に姿を見せないと言われる王が、直々にこんな不気味な場所に足を運び、灯台の灯りを消すよう命じた。拒否され、説得をしたと思われるが、服装から学者か責任者らしいこの虫は、断固拒絶した。

なぜ拒否したか。灯りをつけていると影は襲ってこない。消すことは危険だからか。だが、現実問題として技術者は倒れていて、灯りは消えていた。王の望んだ通りに。そして、おそらくその後、純粋な器を決めるレースで勝った器を連れていく王はひとりだった。

この状況からして何が起きたかは明白なのではないでしょうか。

各地で集めた情報を合わせると、古くからの虫の墓場のような場所であるアビスは、王が肉体を乗り換えて永遠に生きるための装置だったのではないか。灯台はそれを制御していた。地底から上ってくる影に王の仮面をかぶせて王の型(カラ、と訳されているがmould=mold=ケーキの型などの言葉なので型が適切かと思う)に入れて次々と新しい王を作ってきた。

そう考えると直近の王が、王国のはずれの抜け殻から想像される長く巨大な姿とは違う、普通の虫の姿になっていることの説明がつきます。

だが、汚染の脅威が増すにつれて、王は自分の不死性をあきらめて、この不気味な装置を器を作る装置に変えた。稼働に当たり、危険であるが灯台の光を落としてたくさんの影を呼び出す必要があった。反対した学者を斬り捨てても強行するほど、王は必死だった。

こう読みましたが、どうでしょう。正しいかどうかは置いても、「消すというのか、それは」という現在の日本語訳では意味不明すぎて何も想像できなかったことだけは確かです。ホーネットの「虚無を共有しない」みたいな直訳はまだいいんです。意味はわかるので。原語を遠く離れて日本語としても意味がわからないのは困ります。本来の英語のセリフからあれこれ考えるとゾクゾクしたし、全体の物語の重要なヒントとなるので、この箇所は日本語訳の中で最も残念な箇所だと思います。

夢拾い3

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