僕とサブローちゃんが統計の本になりました!

夢見の釘で夢拾い(2)ノスク惨劇の巣

先日、倒れている虫に夢見の釘を当てた時の言葉が翻訳しづらいであろう問題について触れました(『夢見の釘で夢拾い(1)絶望のキャンプ』)。今日は、その結果が最も残念になっていると感じた場面について。それは、裏を返せば夢の言葉が最も効果的に使われている場面でもある、ノスク戦への道のりです。

自分そっくりな誰かを追って、迷路のような狭くて暗い道をどんどん進んでいく場面です。誰なのか、事情を聞けないか、と、必死で追っていくと、背後で次々にシャッターが閉まります。

「引き返せない」

気づいた時にはノスクの巣に誘い込まれている、あの身の毛もよだつシーンです。

途中、たくさんの虫が息絶えて横たわっていることにお気づきになったでしょうか。彼らの心をのぞいてみたことは?

日本語版
会いたかった … どのように? … いや … ちがう … 私の顔 … おまえは死んでいるのか? … 逃げるな … 親愛なる … 戻れ … 私のように … 兄弟 … どのように?

分岐があるので多少前後するかもしれませんが、概ねこんな感じで入口から終点であるノスクの巣まで点々と続いています。こうした断片的な言葉から彼らに何が起きたか想像できるでしょうか。僕は、わかりませんでした。そこで言語を英語にしてやってみたら、ようやく状況が飲み込めて、ゾッとしました。英語版は以下の通りです。

Missed you … How?  … No  … Wrong … My face … You were dead? … Don’t run … Dearest … Come back … Like me … Brother … How?

これを、状況に即した日本語訳に変えてみよう。

会いたかった … どうして(ここに)? … そんな … おかしい … 私の顔 … 死んだんじゃなかったの…? … 逃げないで … ダーリン … 戻ってきて … 私そっくり … 兄さん … どうして?

今度は聞こえてきませんか。ノスクの恐るべき罠にかかった虫たちの最後の叫びが。ノスクは狙った獲物の心の中を探って、親しい相手の姿を作り出し、それを囮におびき寄せます。暗闇の巣はハロウネストの敵対国。倒れているのが、全てハロウネストの虫たちであるのは偶然ではありません。敵国の迷路のような暗がりの中で、不意に目の前に現れた、そこにいるはずのない愛しい相手。恋人であったり、死んだはずのきょうだいだったり。被害者が一番会いたい相手をノスクは選んで化けるのです。

獲物に大事な相手がいない場合は、主人公の時と同様、本人の姿に化けるということが、「私の顔」あたりから察せられます。

「あり得ない」と思いながらも夢中で追いかけて行く。「兄さん、死んだんじゃなかったの?会いたかった!逃げないで!」見失いそうになりながら懸命に追っていくと、愛しい相手の顔が突然歪み、正体を現したグロテスクで巨大なクモが襲いかかってくる。途中でやはりおかしいと気づいた者も、毒牙にかかる瞬間まで再会を疑わなかった者も等しく倒れて、そこに横たわる。

悪夢です。自分のそっくりさんは、実は以前にも一度見かけています。カマキリ族の村から暗闇の巣に入って、ムカデが暴走している難所で迷っていると、さりげなく現れて、そっちにいくと温泉とベンチのある穴に落ちて助かるのですよね。この経験があったので、味方だと思っていたんです。甘かったです。単にノスクは獲物を近くにおびき寄せただけだったのだと思い知りました。

これ、すごい演出ですよね。ノスクの卑劣さ、狡猾さ、冷酷さ、被害者の戸惑い、恐怖、そして一連の光景が雄弁に語る悲惨な運命が間もなく自分に降りかかるのだという恐るべき予感を、これ以上効果的に、しかも大してコストをかけずに感じさせることが可能でしょうか。ゾクゾクさせるのに、美麗なフル3Dとか必要ないってことがよくわかります。想像力を刺激するのが一番いいんです。現物を見せられるより、想像させる方が、それぞれ自分が一番怖いように想像しますから。

ああ、怖い怖い。ノスク怖い。舞曲風のかっこいい曲をもらい、キャラデザも群を抜いて不気味で優遇されていますよね。

ところで神の家でノスクの上位版と戦うと、自分じゃなくてホーネットに化けるんだそうです。主人公の中でホーネットは特別な存在になっていく、ってことが示唆されているんでしょうか。

ちなみにノスクの攻略は、くれぐれもホーネット(再)を倒して影の衣アリで挑みましょう。難易度が段違いになります。

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