僕とサブローちゃんが統計の本になりました!

地味ながら重要人物・カタツムリの霊媒師:ホロウナイト考察

祖先の塚を憶えていますか。最初通過しただけでウッカリ存在を忘れてしまいがちですが、最初のソウル技[復讐の魂]をもらう重要な場所です。

貝殻のような帽子(=カタツムリの家)をかぶったカタツムリの霊媒師が、そこにいます。

おじさんはこの後明らかになるように主人公が何者か知っていてこの力を授けたわけではなく、自分が守る塚に住み着いた迷惑な生き物を、その力を使って退治してほしかっただけのようです。

得体の知れない初対面のおじさんから、いきなり得体のしれない何かを授けられそうになり、尻込みすると、「これがないと先に進めない、」つまり暗にゲームの進行上必要であると言われます。

その役目を終えると「もう用はない」みたいなことを言われるので、日頃から有象無象のゲームをやり過ぎて”スレた”ユーザーは、つい「魔法を獲得するためにだけある場所で、もう来なくていいようだ」などと思ったりします。

実際、ここで授かる遠隔攻撃が無いと次のエリアである緑の道への通路を塞いでいる巨大バルダーを倒せず先に進めませんので納得してしまうのもあります。

ですが、そこが何度も帰りたくなるホロウナイトの世界と、納期に追われてやっつけ仕事で売り出された愛のないゲームの世界との違いで、折に触れて訪問すると、ちゃんとセリフが変わります。

それも、魔法の専門家にふさわしく、主人公が新たに身に付けたソウルの技に強い関心を持って反応し、コメントしてくれます。

そもそもこの塚には終盤に覚える2段ジャンプが無いとアクセスできない「ささやきの根」もあるので、プレイヤーの再訪は想定され、奨励されていたりするのですよね。 

地味ながら重要人物・カタツムリの霊媒師:ホロウナイト考察イラスト1

そしてその数々のコメントから、主人公が冒険によって各地で獲得した多くの技が、おじさんの親戚由来の技だということがわかります。そういえば、水晶山の大きな結晶に閉じ込められていた誰かはおじさんに似ています。

帽子にトゲトゲがついて、首飾りは仮面(この世界のしゃれこうべ)の代わりに水晶山の住民らしく水晶になっています。四番目の叔母さんなんだそうです。

それぞれの性格を知ることで、同じスキルなのに違った気持ちを持って使うようになったりします。こういう細やかさが世界の厚みとなっていくのがよくわかります。

そして、ここにもホロウナイトらしい切なさがあります。実際に起きたことと、おじさんが想像していることとの間に結構大きな「ずれ」があることです。

地味ながら重要人物・カタツムリの霊媒師:ホロウナイト考察イラスト2
そうじゃないんです!でも語らぬが花かもしれません

おじさんは自分が主人公にそうしたように親戚が魔法を「教えた」と思っていますが、実際には、叔父さんも叔母さんもこの世を去っていて、主人公はその命の余韻のようなものを拾ったに過ぎません。

喋らない主人公がその誤解を訂正することはありませんので、プレイヤーはちょっとした葛藤を抱えたままになります。中には壮絶な最期を迎えたということが容易に想像できるケースもありますので、やみくもに真実を伝えればいいというものでもないでしょうし。

各スキルに対応するおじさんのセリフは、たまに読みたくなるのでスクショに撮ってあるのですが、ライブラリから探すのが大変なのでまとめました。まだ読んでいなくて自分で話しかけたい人はUターンしてください。そのために少しスペースを開けておきます。






獲得したソウル技ごとのカタツムリの霊媒師のセリフ

[復讐の魂]
おじさんに教わる技なのでコメントはなし。

[シェイドソウル]
「なんと、わしが与えた復讐の力が、おまえの中で変化したようだな。おまえはあの力をなにか…別のものに変えてしまった。オホホホ!ただモノではないと思っていたがな!おまえのエッセンスが魔法と結合したようだ。そのように豪快な変化を引き起こすとは、きっと強力な力の源を見つけたのであろうな。」

figureの訳を逃げていて、イミフになっている

復讐の魂を強力にするシェイドソウルは、優美な鍵を使って入るソウルの聖域の左側の塔で入手します。本来の持ち主である人物は、やはりカタツムリの帽子をかぶっていたのでカタツムリ族なのだとは思いますが、おじさんがその力を認識しないということは親戚筋ではなさそうです。

ところでここの原文は

“A figure connected to a device.”

ですが

日本語訳はfigureの解釈に困ってか

”なんらかのカラクリがある。”

という曖昧な訳になっており明確な間違いではないかもしれませんが、ホロウナイトの物語上での意味は分かりません。このfigureは「人」の意味で、「誰かが何かの装置につながれている」ということだと思います。

地味ながら重要人物・カタツムリの霊媒師:ホロウナイト考察スクショ2
“connected”が日本語になっていないんすよ

この場面で、これが犠牲者から魔力を抽出する装置だ、ということが伝わらないと、ソウルの聖域で組織的かつ日常的に行われてきた悪行のおぞましさと、それを罰した王の決断の正当性がハッキリしませんので短いですが、重い一文なのですよね。

とはいえ、大きな流れがハッキリ見える小説や映画と違って、断片的なものを含み全体像が掴みにくく、おそらく詳しい説明も無いと思われるゲームの翻訳って本当に大変だと思います。ビッグタイトルでもビックリするような誤訳があったりすることを思えば、ホロウナイトの訳はインディーゲームなのに健闘していると言っていいでしょう。

例えば英単語では伯父と叔父、伯母と叔母の区別が無いのですが、おじさん、おばさんと平仮名にしても問題ないところを、敢えて関係がハッキリする叔父と叔母になっているの、いいなと思いました。それぞれ三番目、四番目であることと、祖先の塚を守っている霊媒師の親は長子か、そうでなくても兄弟の上の方であろうという判断ですよね。こういう一歩踏み込んだ翻訳って好きです。

機械にかけられていた謎の人物は、機械から降ろした瞬間事切れますが、最後の瞬間にカッと目を見開いて叫びます。つまり、意識があります。なので、他のケースのような拾い物ではなく、主人公が「ソウルの師」が掠め取っていたはずの「破壊のダイブ」を身につけていることに気づき、一連の悪に立ち向かっていると信じて託してくれたのだと思いたいところです。

ファッションがカタツムリなので影の一族とは関係なさそうですが、おじさんが「おまえのエッセンスが魔法と結合した」と評したように、持ち主の最後の無念の怒りが、主人公の影属性と結びついた結果ということかもしれません。

[亡霊の叫び]
「わしの大きな”いとこ”から力を得たようだな。おまえもなかなかやるのう。
彼女はもともと親切なタチではないし、当然わしのように気前もよくない。だがあの声はすばらしい!彼女のソウルがあのような力を持つのも当然だ。」

地味ながら重要人物・カタツムリの霊媒師:ホロウナイト考察スクショ6
確かに帽子でかい。しかし切ない

もう帽子しか残っていませんが、確かに帽子のサイズから察するに、かなり大柄なのは確かです。夢の釘で最後の思いが聞けます。ケチでいじわるだったかもしれませんが、もういないとなると寂しいものです。おじさんがそれを知らないのも。

[アビスの叫び]
「その叫び…おおお、そのような形で歪められるとは…われわれの種にはできない芸当だ。おまえがその力をどこで得たにせよ、それはわれわれが決してのぞこうとしなかった場所であろう。」

上記の叫びをアビスでアップグレードしたもの。おじさんにとって影の力は未知だということ、影の一族とは関係がないということがわかります。体が真っ黒なのでもしや、と思っていたのですが。

[破壊のダイブ]
「ホ!新しい力を得たようだの。足元の岩を砕くその力、より深くもぐりたい者にとっては有用だろう。わしの三番目の叔父が同じ力を持っていた。しかもかれはすごく短気での!まったく恐ろしい存在だった!」

地味ながら重要人物・カタツムリの霊媒師:ホロウナイト考察スクショ3
こいつはカタツムリ一族には見えませんよね

これ。おじさんはそう言いますが、ソウルの師をやっつけて入手したのですよね。ではあいつが三番目の叔父さん??? いやいやいや、カタツムリ一族には到底見えません。これはアレですよ。つまり、シェイドソウルの元になる力をくれた犠牲者のように、あの機械にかけられて「抽出」されたということですよね。むごすぎる。そして、このあたりのグロい事情を点在するヒントによってユーザーが察するように促す演出が素晴らしい。

聖域にある懺悔の告白とか、奥に隠されたおびただしい数の遺体とか、ソウルと生への妄執から異形の物体に成り果てている魔導師たちの末路とか、巨大だったのに倒したら萎れたしょぼい普通の虫になったソウルの師の本体とか。いちいちゾッとしました。

[漆黒のダイブ]
「友よ、おまえはまた新たな力を得たようだの。ひょっとしてわしの四番目の叔母と会ったのか?彼女はあの水晶山の横に住んでおる。訪ねた者はなかなか驚くようだの。この場所にしばられていなければ、わしも会いに行きたいところだが。」

地味ながら重要人物・カタツムリの霊媒師:ホロウナイト考察スクショ4
僕が殺してしまったんじゃないよね?ね?

結晶に閉じ込められて、叔母さんはもう生きていなかったのだと思うけど、粉々にしちゃってごめんなさい…。ところで訪ねた人が驚くのはすごい難所だから?おじさんは極めて普通に「会いに行きたい」と言っています。あのトゲやウザ敵を脅威に感じないほどの身のこなしなのでしょうか。一度ご一緒してみたいものです。

〜おまけ〜
[ソウルイーター]
魔法ではありませんが、安息の地の地下奥に隠されたチャーム[ソウルイーター]を拾う場所にもカタツムリの魔導師の姿があります。普通のファンタジーでいうエルフのように、ホロウナイト世界で魔法に長けた種族といえばカタツムリということでしょうか。チャームが誰かの最後の思いであることが多いことを考えると亡骸なのかもしれませんが、なかなかファッショナブルです。

地味ながら重要人物・カタツムリの霊媒師:ホロウナイト考察スクショ5
よく見ると部屋もカタツムリのおうち型

このように魔法の力に秀でたカタツムリ一族ですが、田舎でひっそりとストイックで素朴な暮らしを送り続けるカマキリほどの集落さえ無く一族は分散して、その多くは死亡していたりします。祖先の塚の規模を考えると、昔はかなり繁栄していたはずなのに。

たまたま汚染に飲み込まれて頓挫したものの戦士の一族であるカマキリ族にも王国による征服の手が伸びていたこと、叔父さんの非業の最期などを考えると、真っ先に攻撃を受けたのではないかと思われます。一族の持つ魔法の力は普通の虫の集まりであるハロウネストにとっては脅威だったでしょうから。

それで「復讐の」魂なんでしょうか。

カマキリ村討伐に差し向けて返り討ちに遭った長老フーは、どうもカマキリ一族が狂った荒くれ一族だというようなウソを吹き込まれて政治的に利用されていたようですし、領土拡大には必ずダークな影が見え隠れします。そのへんがグロや嗜虐性重視の普通のダークな作品とは決定的に一線を画しているように思います。

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