僕とサブローちゃんが統計の本になりました!

夢見の釘で夢拾い(1)絶望のキャンプ

少し前までは洋ゲーの日本語訳というと、割とトンデモ訳が普通にあったりしたものです。最近はグローバル化で多言語対応が当たり前になったためゲーム翻訳専門の業者もいるそうで、小さな会社の小さなゲームにも、こなれたいい日本語訳がつくようになってきました。ありがたいことです。

インディゲームであるホロウナイトの和訳もいい感じです。ゾートが涙の都の降り注ぐ雨の中で主人公に呼びかける”Soggy Vagabond”を「ずぶぬれ小僧」と訳しているあたり、書類の束をただ翻訳しているのではなく、登場人物像と相関関係をちゃんと把握した上で例えばゾートは終始一貫したゾートらしさを、ホーネットはホーネットらしい言葉遣いであり続けるよう、丁寧に仕事をしてくれていると感じて、プレイヤーとしては感情移入しやすく嬉しいです。

ただ、さすがに全編をプレイしながら翻訳しているわけではないでしょうから、たまにおかしなところはあります。それが目立つのが、倒れている遺骸に夢見の釘を当てた時の言葉です。だって、これ、一言、二言の断片的な単語が多いですよね。リストにある単語だけ見て状況に適した訳をするのは正直なところ無理ゲーでしょう。だから決して責めるつもりはありません。状況説明が付記されているとしても限界があるでしょう。

ですが、夢見の釘で聞ける言葉はその虫の心の最後の残留思念なので、ちゃんとした意味がある場合が多いのです。それが日本語版では上記の理由で伝わらないのがもったいないので、齟齬が大きいものに関して、ここで共有していきたいと思います。そのきっかけになったのが、漫画にもある緑の道のはずれ。ここに初めて来るときには夢を覗けないので、「なんか倒れてる」と思っただけでした。やがて夢の釘を持って再来した時に、ああ、何か思い残したことがあったのかな、と、見れば、「…疲れた…」は分かります、もう一方は「…失われた…」

何が?って思いますよね。これの原文はLost。(We are) lost、「迷ってしまった」です。つまり、ここで倒れているふたりは、迷いながら緑の道の果てまで来たものの、酸の池と、近づくとペッと何か吐いてぶつけてくる凶悪な植物が群生する難所でついに力尽きてしまったのでしょう。自分も1周目はここで倒れたから、よくわかります。無理せずベンチでポン!すべきだったのです。

ここは厳しいですもんね。はい、僕も遭難しました。

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