ラテン語ならアルクス・ファーターリスですが、フランス語はラテン語ととても似ているのでフランス語なのかもしれません。日本語では一般にアルクス・ファタリスと表記されるようです。
アルクスとは砦とか要塞のような意味ですが、この世界では固有名詞になっているので「死の砦」とか訳さなかったのは思慮深いと思います。
gogのフランスセールで安かったのでフラッと買ったこの作品ですが。やっているとすぐ死ぬし、すぐ行き詰まって最初からやり直しになるのに、なんだか不思議な魅力があって止まりませんでした。
何がそんなに楽しいのか、と考えてみると、
ワクワクする世界観
このタイプのゲームは、舞台が閉所になりがちで、それにはそれなりの説明があるのですが、このゲームの場合は、太陽が没して地上に住めなくなり、生物が地下に追いやられたためです。それだけではありません。この危機を克服するために、人間、ゴブリン、トロール,ヘビ人間などの、普段はいがみ合っていた者たちが一丸となって働き、なんとか地下に生存できる環境を作ったのです。
さらに、「なんとか住めそうだな」と思うや、途端にまた元のいがみ合いを始めて混沌としている、こんな状況から始まります。まさに War never changes…ワクワクしますよね。
アドベンチャー的な楽しみがある
一見ダンマス風のよくあるタイプのようで、世界との関わり方が高度です。要らない物をあっちに投げて「ん?なんだ?」と思って様子を見に来た敵を横からボコったりできます。
また、「今度汚れた皿を放置したらコロス!」みたいな会話を盗み聞きして汚れた皿をそっと置いておき、同士討ちを誘ったりします。
街の人も割と自由に歩き回っているし、お店が閉まっていたり開いていたりします。城に着いた時は開いていた城の台所が、シナリオが進むと料理人のおばちゃんが「こわいわー」とかいいながら広間に来てしまうため閉鎖されて入れなくなったりします(高度な開錠技術があれば入れる)。
さらに、世界にある物と、ただインタラクトするだけではなく、手持ちの物をそこにある設備と「組合せ」たり、アイテム同士を組み合わせてみたりと、いろいろなことが起きます。
そして、アイテムの組み合わせで楽しいのが料理!
料理
最初に断っておきますが、僕は飢えるゲームが大嫌いです。マインクラフトも、それがあるので早々に撤退してポータルナイツをやりこんだという思い出があります。Arx Fatalisも実はお腹が空きます。でも、ゲームの進行を脅かすほどには減りません。餓死を恐れるあまり(風来のシレンのせい)拾える食料は全て拾った結果、食料品店でも開くべきなほど莫大なストックができて、思い切り余りました。
では空腹パラメータは無用の長物かというと、そうではありません。適度に腹が減ってくれないと、せっかく料理したのに食べられないじゃないですかああ!
そうです、僕は生まれて初めてゲームで料理を楽しく感じ、また、腹が減ることに喜びを感じました。なぜでしょう。料理が楽しいんです。
火があれば料理ができます。いえ、火がなくてもできます。消えてしまったキャンプを見つけ、魔法で点火すればいいんです。そして、火のそばに生の食材を置くと、パチパチと火の爆ぜる音がして、焦げ目がつきます。
肉や魚はパッと焼けるだけですが、小麦粉と水を組み合わせて作るパン生地は特別丁寧に作ってあり、しばらくすると膨らんできて、うっすらとキツネ色になってからパッと焼き上がります。
前述の「組合せ」に通じますが、パン生地をさらに綿棒と組み合わせるとタルト生地になります。これをリンゴと組み合わせるとアップルパイに!さらにワインをかけると変化します。手間の分だけ、おそらく腹持ちがよくなっているんだろうと思いますが、明示はされません。でも、いいんです。楽しいから「たまにはパイでも焼くか」と思うだけで。
魔法
僕が最初にこのゲームスゲー!と思ったのは、魔法です。マウスを操って、自分で魔法の印を結ぶのです。この判定が厳しくて、なかなか認識してくれないのですが、その困難さがまた魔法っぽくていい感じでした。
しかし、なかなか行使できない魔法では戦闘で使い物にならないので、3つまで貯めておくことができます。安全な時にゆっくり錬成しておいて、いざという時にブッパするのです。魔法はデリケートなもの、という感じで好きでした。ま、敵はリアルタイムで印を結んでくるんですけどね…。
印(ルーン)が認識されると、どこからともなく低い声がそのルーンを詠みます。メガ・ヴィタエ。ラー・モーヴィス、アーム・ヨック・ター。
これ、かっこよくて大好きでした。苦労の末、ついにこのゲームをクリアした時、この魔法システムと離れるのがつらかったほどです。
でも、なんと思わぬところで再会を果たしました!その後始めたESO(エルダー・スクロールズ・オンライン)の付呪システムでグリフを作る時、ルーンが詠みあげられるのですが、この声といいトーンといい、そっくりなんです。Arx Fatalisはフランスのゲームですが発売はベセスダでしたから、偶然ではなく、おそらくオマージュでしょう。
戦闘
戦闘は貯めが必要なのと、しっかり狙わないといけないので慣れるまで少々戸惑います。でも慣れてしまえば楽しくなってきます。ただ、ヒットした時の手応えがあまりないので、自分で判断しないといけません。
サバイバル
アドベンチャー的楽しさの究極として、どのように(戦士・魔法使い・シーフ)この世界を生き抜き、引いてはこのゲームをクリアするか、というのがかなり難しいチャレンジとなっています。僕は6回くらいやり直しました。中盤でどうしても倒せない敵がいて、泣く泣く出直したこともあります。
レベルアップが大変シブく、雑魚でレベルを上げることがほぼ不可能なのでスキル振りを間違えるとドツボにはまります。僕は最終的にはレベルが上がってもすぐにはスキルを振らずに貯めておき、難局に当たった時に振り方をいろいろ試し、突破できたらそれで確定とするようにしました。
でも、魔法が、料理が、謎解きが楽しいこの世界にどっぷりハマっていて、辞めるという選択肢はありませんでした。常に「どうしたら突破できるのか」だけ。ついにクリアした時は、本当に嬉しくもあり、この世界を後にすることが寂しくもありました。終わった時こういう気持ちになるのは、良ゲームの特徴だと思っています。
死から解放へ
この作品は、リリース後に出たアップデートと同時にソースコードが公開され、たくさんのファンが手を入れたArx Libertatis(アルクス・リーベルターティス)というバージョンが存在します。これをプレイするにも、まずベースとなるArx Fatalisが必要となりますが、よくセールになっており、$2前後で買えます。
このLibertatisでは、Fatalisのバグや、いびつなところがかなり緩和されています。貧弱なジャンプ力のせいで鬼畜になっている箇所が普通になったり、魔法の印が面倒ならルーンを選ぶ形式も選択できるようです。[訂正:正しくは、入力時に角度補正がついて認識率がよくなるモードが選べます。Libertatisについて詳しくは実際に後日入れてみたので、漫画の後の追記をご覧ください。]
Fatalisをやって、どうしても辛ければ、こちらをプレイするのもアリだと思います。世の中にある攻略はLibertatisが前提になっているので、魔法が弱体化されているFatalisではパワープレイすぎて行き詰まります。つまりLibertatisは力で押し切ることが可能なため、本来想定された緻密なルートを通らずにクリアできてしまうという面も持っています。それはもったいないと思いました。
相当に苦労したし、鉱山では「こんなゲーム知らなきゃよかった!」とまで思いましたが、それでもFatalisでクリアすることは可能でした。苦しんだからこそ、ついに道を見つけた時、終わった時、あんなに嬉しかったのだ、とは思います。間違いなく、忘れられないゲームの1つとなりました。
Arx Libertatis 情報
この記事を公開してから、思いついてArx Libertatisをインストールしてみました。まだ序盤ですが、オリジナルのFatalisではなぜか効かなかったガンマ補正がちゃんと有効なので、暗すぎてつらい場合は明るくでき、かなり楽です。
魔法はオプションとして角度補正がついてグッと認識率が上がっています。これを有効にすると、とりあえず序盤で使える点火、ファイヤーボールでは認識率は100%でした。Libertatisの他の恩恵を受けながら、オリジナルのコアな魔法を楽しみたい場合はこのオプションを切ることができるようになっており、原作へのリスペクトを感じます。
他にも束ねたアイテムを束ねたまま地面に置けたり、武器が壊れると自動的に次の武器を装備したりと、細かいところにも手が入っています。気になる鬼畜ジャンプは終盤なので確認できませんでしたが、拡張されたオプション画面を見るにつけても、かなりしっかり作られているので大丈夫そうです。
結論としては、まずはオリジナルのFatalisで遊んでみてほしいですが、魔法の入力にストレスを感じて止めてしまうくらいならLibertatisを導入することをオススメします。
ダウンロードはhttps://arx-libertatis.org/のトップにあるDownloadボタンから。インストールの際、Fatalisを上書きするか訊かれるので、いつでもオリジナルも遊べるように別ファイルにする方がいいと思います。
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