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イベルメクチンと信頼区間

統計学

「イベルメクチン、新型コロナへの効果確認できず 国際チーム論文発表」という記事が出てました.イベルメクチンについては,データの改竄についてこのブログでも書いた記憶があります.

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このときから,既に証拠があやふやだと言われていたわけですけど,今回それがRCTによって証明されたことになります.new england journal of medicineに掲載された論文ということで,その影響力は水戸黄門の葵の御紋に匹敵します.何しろ,医学・生物分野での最高峰としてインパクト ファクター75です.この論文誌に掲載される学者はそれだけで大変なエリートです.世界四大医学雑誌と言われているのはこの雑誌に加えて,JAMAと呼ばれるジャーナルオブジアメリカンメディカルアソシエーション,The LancetとBritish Medical Journalです.

論文はここからPDFでダウンロードできます.それによれば,米国,オーストラリア、ブラジルの国際研究チームが,「イベルメクチンの投与は新型コロナに対し入院率の低下につながらない」と結論しています.被験者は,2021年3から8月にかけて,新型コロナ感染者のうち,発症7日以内の重症化リスクのある1350人です.ちゃんと二重盲検もしているので,信頼性は高い結果です.

とはいえ,当時のデルタ株と今のオミクロン株では,結果は異なる可能性もあります,ブラジルの医療機関で実施した実験なので,おそらく被験者はブラジル人がほとんどで,日本人とは異なった結果となる可能性もあります.一つ気になるのは,この実験が二重盲検で実施されたということは,研究者はイベルメクチンの有効性を疑っていたのではないかということです.

それというのも,被験者には重症化リスクがあるので,少しでもイベルメクチンの効果が期待できるのならば,偽薬を使うという非人道的なことはできないだろうからです.研究者を含め医療関係者の共通コンセンサスとして,効果はあっても多分気休めくらいに考えていたからこそ許される実験だということです.いずれにしても,反ワク界隈ではこの論文をどう受け止めるのか興味深いです.

この論文では,congidence interval でなくcredible intervakで議論しています.日本語では,それぞれ信頼区間でなく信用区間の違いで,要するに頻度統計に基づくかベイズ統計に基づくかの違いなわけですが,ともにCIと略記するのでとても混乱します.統計学の初心者には,頻度統計を教えるのが日本では通常なので,95%信頼区間は母数がそこに存在する確率95%で存在するわけではないと注意するわけです.信用区間であれば,その解釈は全く正しいので,後々この齟齬に苦しむことになります.

英語の統計学の教科書でも,最近のものは標本分散と不偏分散を区別していないものもあります.分散には不偏分散しかないという考えです.ですから最初からn-1で平方和を割るように書かれてます.とても合理だと思います.初学者が後々悩むことがなくなります.そういう教科書では,仮説検定も推定の延長として教えていたりして,仮説検定だなどと肩に力を入れる必要がなくなってます.

統計学を教えるなら,こうあるべきだとは思うのですが,日本では時期尚早かもしれません.この教え方だと,日本で教える統計は学びにくいからです.実際,不偏分散という言葉を使っていないいくつかの日本の教科書もありますが,この本で統計検定に合格するのは困難です.私が今書いている本も日本標準に合わせるしかないのですが,それが少し残念なところです.

信頼区間と信用区間の違いをもう少し詳しく解説しようとも思ったのですが,今日は雨振りでどうもその気になれません.ということで,今日はここで.

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