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紫の火花

覚え書き

最近何かと騒がしい皇室関連のニュースですけど,いつもは目にも止まらないのに,このニュースには「おや」と思いました.リンクは貼りませんけど,川嶋辰彦さんが東京都内の病院に緊急入院したというニュースです.学習院大学名誉教授で経済統計学を専門になさっていたそうです.この息子さんは知らなかったのですが,お父さんの川嶋孝彦さんは,太平洋戦争前後にかけて日本の統計の発展に尽くした人として有名です.親子で統計学に関わっていたんですね.

私は,川嶋孝彦さんを伊藤清先生の自伝的なエッセーで知りました.

伊藤清先生は数学者で,ブラックーショールズ方程式の基礎となった「伊藤の補題」で有名です.いわゆる確率微分方程式のことで,これなくしては現代のMCMCを駆使したデータサイエンスはあり得ないわけで,ファイナンス分野だけでなく統計学分野でも偉大な学者です.

伊藤先生のエッセーによれば,生活のために学問の道に進むことが叶わず,大蔵省の役人になったそうです.1年後に統計局に配置換えになったのは,おそらく先生の数学の才能を見抜いた誰かがいたのでしょう.私はその人が川嶋孝彦さんだと思ってます.それというのも,統計局の上司であった川嶋孝彦さんに「伊藤くんの研究は,大きな目で見れば統計局の仕事につながるから,好きにして構わない」と言われたそうです.(厳密な台詞は忘れてしまったので,そんなことを言われたそうです.)この言葉がありがたかったということが書かれていました.天才を育むのはやはり天才の成せる技なんですね.

全くどうでもいいことですが,この川嶋孝彦さんの奥様は川嶋紀子さんと言います.ということは,川嶋辰彦さんは娘に母親の名前をつけたことになります.もっとも読み方は「きこ」ではなくて「いとこ」なんですけど.西洋では珍しくないですけど,日本では珍しいケースですよね.

他にも日本の数学者といえば,「紫の火花」で有名な岡潔先生がいます.

岡潔先生は,世界に名を馳せた日本の数学者です.Wikiにもありますけど,京都帝国大学時代の湯川先生朝永先生らも岡先生の講義を受けていて,大きな影響を受けたと言われています.湯川,朝永といえば子供の頃の憧れの人物でしたから,当然私も岡潔先生に興味を持ちました.「紫の火花」は名著と言われて久しいものの長らく絶版になってました.それが,昨年でしたでしょうか56年ぶりに復刻したのです.特に教育とかに興味をお持ちであればお勧めします.こちらの方が読みやすいかも.

確かこの本はベストセラーになったはずです.「イパネマの娘」がビルボードのトップになった時代もあったんだなということと通じるものがあります.岡先生のことを思うに,今の日本人にここまで深い思索ができる人がどれだけいるのだろうかと.コメンテーターと称する人々の浅い考えに嫌気がさすとともに,それに振り回される人々の多さにも絶望します.こんな時代だからこそ,日本人にもこういう人がいたのだと思い出させてくれる本を秋の夜長に読むのもいいもんですよ.それでは.

統計的問題解決研究所

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