僕とサブローちゃんが統計の本になりました!

Yoku’s Island Expressレビュー漫画:ピンボールで大冒険!

ジャンルはピンボールオープンワールドアクションRPG。えらく長い上に意外すぎる組み合わせに思わず二度見してしまったが、遊んでみると、まさにピンボールでオープンワールドでアクションRPGだった。しかもピンボールとしてもオープンワールド形式のメトロイドヴァニアとしても中途半端ではなく上質で、何より楽しい。

主人公はフンに乗って小さな島にやってきたフンコロガシの新しい郵便屋さん。ヒモでつないだフンを転がしたり押したり引っ張られたりしながらピンボール台になっている地形を乗り越えて配達しながら、たくさんのユニークな島民と出会っていく。小さな頼まれごとをしたり手伝ったりしているうちに、気づけば大きな運命の渦に飲み込まれていくという王道RPG展開。新しく獲得したスキルによって新たな道が開けたり、できなかったことができるようになるなど、メトロイドヴァニア的要素も十二分に楽しめる。

そもそもピンボールオープンワールドアクションRPGを作ろう!というアイデア自体が非凡なのだが、それを実現するために次々と斬新なアイデアでつないでいく発想の泉がすごい。そして、そうした前例のない発想を楽しく快適に遊べるように実現しているところにセンスのよさと確かな技術力を感じる。

ピンボールなのでガチャガチャやっていればそれなりに進みはするが、ピンボールなればこそ、慣れれば上達して正確なショットも可能になってくる。普通のピンボールと違って斜面を転がる球の勢いが足りなければ押して走ったり、逆に落ちそうなのを押し返して踏ん張ったりすることで物理計算に若干介入できる。この「若干」というのがポイントで、ゴリ押しができるとピンボールとしての面白さが損なわれるし、役に立たないのにボールの速度に干渉してしまったりするとストレスになりかねない。それがちょうどいい、努力しなくてもいいが、ちょっと頑張ってみると結果がちょっと変わったりするのが、絶妙なスパイスになっている。普通のピンボールの「台揺らし」よりずっといい。次元が違う。

Yoku’s Island Expressレビュー漫画:ピンボールで大冒険!スクショ1
ピンボールとしても楽しめる、どころかピンボールを別次元に引き上げている

そう、このゲームでは「フンコロガシがボールを転がしている」という前提が、ピンボールゲームとしての足枷になるどころか飛躍のためのバネになっている。台揺らしがわりの「押したり引いたり」もしかり、ピンボールの華であるマルチボールについてもまたしかり。マイボールは1個なんだからボール増えるの無理ではないかと思っていたが、RPG要素もあるんだからとあきらめていたところ、ちゃんとあった。しかも、ちゃんとそこにドラマがある。「この台はマルチボール装備です」ではない楽しさが。デジタルピンボールならではのトリックボールなども、世界観にしっかりマッチしたものが、ちゃんとある。

RPGとしても、次々に現れる不思議なステージ、あっと驚く展開や、ワクワクする演出など、単調な戦闘とムービーばかりの平板なRPGには見習ってほしいくらいだ。メトロイドヴァニアとしても、新しいスキルで世界をもう1まわりする、など、妥協のない仕上がりだ。

Yoku’s Island Expressレビュー漫画:ピンボールで大冒険!スクショ2
RPG要素もたっぷりで、わくわくさせてくれる

ゲーム自体が良すぎて言及が遅れたが、油絵風にレンダリングされた世界が美しい。キャラデザインもすばらしく、チョイ役のNPCのひとりひとりが実に魅力的でしっかり作り込んであり、眺めているだけで楽しくなってくる。なにしろ主人公がかわいい。このゲームを買おうか検討していた時、タイトル画面の屈託無い笑顔にやられて、「このゲームを買いたいから高評価だといいな」というスタンスで調査してしまった。いつもは「なんとか買わない理由がほしい」というような減点法なので、我ながら驚いた。キャラの魅力って大事だ。

Yoku’s Island Expressレビュー漫画:ピンボールで大冒険!タイトル
この笑顔にノーと言えるか?僕には言えなかった

音楽も普通にスムースジャズ局でかかっていそうなジャズバンドの実演奏で、フレッドレスベースがかっこよかったり、ノスタルジックなオルガンが沁みたりと本格的で、美しい背景や小さな島という世界観と相まって、リラックスしながら楽しむことができる。

ここまで書いてきて、結局このゲームは半端なところが全くないと改めて気付かされた。インディーゲームにありがちな変な日本語さえない。通貨になっている果物のひとつひとつまで美味しそうに作ってある。何時間にも渡るゲーム体験も、一瞬一瞬の積み重ねなのだから、ユーザーが濃厚に接触するこうした細部の仕上がりはとても重要なのだと思い知った。もう財布がいっぱいでも、パパイヤが出るとつい取りにいってしまうほどだ。おいしそうだから、というだけの理由で。このクリエイターの次の作品が楽しみだ。

ピンボールなので一度クリアしてもまた最初から遊べば楽しいし、また、半端ないやりこみ要素もちゃんとある。これで1000円前後なのだからお買い得ではないか。平成最後に買ったゲームになったが、最後に大当たりを引いて気持ちよく令和に向かうことができた。Yokuちゃん、ありがとう。また遊ぼう!

Yoku’s Island Expressレビュー漫画:ピンボールで大冒険!
ジャンルがすごいが、まさしくそのとおり!

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