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  • ホロウナイト:夢見の釘で夢拾い(5)ニセモノの夢

    以前の記事『夢見の釘で夢拾い(4)幼虫さんの夢』で、「幼虫さんに擬態したニセモノには夢がないので見分けがつく」と書きました。が、間違ってました。これほどまでに愛情を込めて細やかに作り込んである作品で、何もないはずがないと疑うべきでした。

    それにしても、本物かニセモノか区別するために夢見の釘を使ったならまだしも、本物が出たあとで、「ニセモノだから何も出ないもんね」と思い込んでいたら、まさかの邪悪な一言です。不意を突かれて、素で「ぎゃー!」と叫んでしまいました。ううう、かなりしつこくやり込んだつもりでも、いまだにビックリさせてくれるホロウナイト、ありがとう…。できれば暑い夏がよかったですが。ホラー映画の手法としても、視聴者が身構えている時よりも、一旦安心させて油断しているところをビックリさせるのが効果的らしいですからね。

    おそらく、以前ニセモノに夢はないと勘違いした時は、釘が届いていなかったのでしょう。そういえば中の幼虫さんではなく、ビンに釘を当てる気持ちでやっていました。今回は、たまたま攻撃範囲が伸びるチャーム「誇りの印」をつけていたので、同じ狙いでも中身に届いたようです。いい加減なこと書いてすみませんでした。元記事と漫画も訂正しておきました。

    さて、ニセモノの夢は3通りからランダムで表示されるようです。

    1)…空洞…
    2)…他の…
    3)…殺す…

    僕はいきなり3)を引いてひっくり返ったのですが、その後検証して、1)の「空洞」にもゾッとしました。だって、空洞といえばこのゲームで重要な言葉であり概念である虚無、voidのことかなと思うじゃないですか。すると、ニセモノはただ食料を得るために擬態するよう進化した虫というよりは使命を帯びた同胞たちを狙う刺客なのか、と。差し向けたのは誰なんだ、とか。

    ワクワク、ゾクゾクしながら英語版で確認したら、英語では以下の通りでした。

    1)…Empty…
    2)…Other…
    3)…Kill…

    「空洞」に当たる単語は期待したVoidではなく、Emptyでした。すると、この状況では、同胞たちを指すというよりは、空き瓶と解釈するのが妥当に思えます。「空き瓶を見つけたから入ってなりすましてやろう」でしょうか。3つの単語はランダムで出るので、時系列はわかりませんが、Emptyは動詞である可能性もあるので、「他のやつを殺して瓶を空けよう」かもしれません。つまり、たまたま空いていたのではなく、空にした、と…。ああ、おそろしい。倒すと幼虫さんぽくなるのも見るのがツライんでやめてほしいです。

    夢拾い5
    マジでビビりました

  • ホロウナイト:夢見の釘で夢拾い(4)幼虫さんの夢

    かわいい幼虫さん。姿がかわいい。声がかわいい。あの声もTeam Cherryのスタッフの一人である立派な成人男性が出しているのかと思うと一周まわってかわいい。つい見つけると嬉しくて即ビンを割って救出していましたが、ふと思いついて夢の釘を当ててみると…

    英語なら …Home…
    日本語なら …家…

    まあもちろん間違いじゃありません。でも、意味からすると、

    「家、それは遠くにあって思うもの」

    などと達観しているわけでもなく、

    「ああ、こんなところに閉じ込められちゃった。おうちに帰りたいよぅ」

    と嘆いているわけですから、

    「おうち…」

    としてほしかったなあ。細かいことですが。「うち」で変換すると「家」とも出るので、ネット上の砕けた書き込みでよく「家じゃそれは普通」のように「うち」と読ませたい「家」を散見しますが、わかりにくいので平仮名がいいと思います。

    幼虫さん地図無しではビンを割るまで分からないと思っていた偽物も夢の釘を当てれば何もないので※、馬脚を現します。「キヒヒヒ」とか出たらチビりそうだったので、無言でよかったです…。

    ※追記:ニセモノにも夢がありました。キヒヒよりチビりました。お詫びして訂正します。詳細は別記事『夢の釘で夢拾い(5)ニセモノの夢 』で。

    夢拾い4


  • 夢見の釘で夢拾い(1)絶望のキャンプ

    少し前までは洋ゲーの日本語訳というと、割とトンデモ訳が普通にあったりしたものです。最近はグローバル化で多言語対応が当たり前になったためゲーム翻訳専門の業者もいるそうで、小さな会社の小さなゲームにも、こなれたいい日本語訳がつくようになってきました。ありがたいことです。

    インディゲームであるホロウナイトの和訳もいい感じです。ゾートが涙の都の降り注ぐ雨の中で主人公に呼びかける”Soggy Vagabond”を「ずぶぬれ小僧」と訳しているあたり、書類の束をただ翻訳しているのではなく、登場人物像と相関関係をちゃんと把握した上で例えばゾートは終始一貫したゾートらしさを、ホーネットはホーネットらしい言葉遣いであり続けるよう、丁寧に仕事をしてくれていると感じて、プレイヤーとしては感情移入しやすく嬉しいです。

    ただ、さすがに全編をプレイしながら翻訳しているわけではないでしょうから、たまにおかしなところはあります。それが目立つのが、倒れている遺骸に夢見の釘を当てた時の言葉です。だって、これ、一言、二言の断片的な単語が多いですよね。リストにある単語だけ見て状況に適した訳をするのは正直なところ無理ゲーでしょう。だから決して責めるつもりはありません。状況説明が付記されているとしても限界があるでしょう。

    ですが、夢見の釘で聞ける言葉はその虫の心の最後の残留思念なので、ちゃんとした意味がある場合が多いのです。それが日本語版では上記の理由で伝わらないのがもったいないので、齟齬が大きいものに関して、ここで共有していきたいと思います。そのきっかけになったのが、漫画にもある緑の道のはずれ。ここに初めて来るときには夢を覗けないので、「なんか倒れてる」と思っただけでした。やがて夢の釘を持って再来した時に、ああ、何か思い残したことがあったのかな、と、見れば、「…疲れた…」は分かります、もう一方は「…失われた…」

    何が?って思いますよね。これの原文はLost。(We are) lost、「迷ってしまった」です。つまり、ここで倒れているふたりは、迷いながら緑の道の果てまで来たものの、酸の池と、近づくとペッと何か吐いてぶつけてくる凶悪な植物が群生する難所でついに力尽きてしまったのでしょう。自分も1周目はここで倒れたから、よくわかります。無理せずベンチでポン!すべきだったのです。

    ここは厳しいですもんね。はい、僕も遭難しました。

  • ホロウナイト: 夢見の釘で夢拾い(3)灯台事件の謎

    断片的で翻訳しにくい夢のセリフの意味不明な箇所について適切な訳を考えるこのシリーズも3回目。これまでの、キャンプで力尽きた虫やノスクの巣への累々と続く遺骸の最後の思いは、意味が分かると状況をより楽しめるという類のものでした。夢の言葉なしでも何が起きたか察せられるるので。今回は、夢の日本語が意味不明なために物語上重要なシーン自体の意味が不明確になっている箇所、アビスの灯台でひっそり倒れている虫の夢に焦点を当てたいと思います。

    アビスに入ると、まず暗くてビビり、どこまで続くとも知れない穴の深さに、さらにビビります。そして不気味な環境音や1発で2ダメージをもたらす影の攻撃に怯えながら進んでいくと、洞穴の中に突如として大きな灯台が姿を現します。上ろうとすると、次々と影が襲ってきます。時には上の足場に乗った途端、同時に3体現れて包囲を狭めて来たりもします。灯台の最上階には、よほど重要な何かがあるに違いない、そう思いますよね。

    ところが、入ってみれば暗い部屋にレバーがひとつ。倒すと灯りが着きますが、それだけ。外に出ると、灯台のまわりにはもう影が発生しないことが分かります。部屋に戻ってよく見回すと、一匹の虫が倒れています。服装からして宮殿にいるタイプのようです。都をうろつく貴族連中よりも階級が上の。それがなぜこんなところに?そこで夢見の釘です。

    …消すというのか…それは...
    王よ、すみません…海が呼んでいる…

    状況がわかりませんよね。日本語としても意味不明です。初回は首をひねりながらも奥に進み、影の衣をもらって帰ってしまったが、どうにも気になります。そこで英語ではどうなっているか見てみると、

    Turn it off? Cannot…
    My king. I’m sorry… The sea calls…

    やはり断片的で分かりにくいものの、少なくとも1行目は消すように命じられて、それを拒否する言葉だというのは議論の余地がないと思います。これだけでも事情がだいぶ見えてきます。2行目で、この会話の相手が王だと判明します。

    滅多に姿を見せないと言われる王が、直々にこんな不気味な場所に足を運び、灯台の灯りを消すよう命じた。拒否され、説得をしたと思われるが、服装から学者か責任者らしいこの虫は、断固拒絶した。
    
    なぜ拒否したか。灯りをつけていると影は襲ってこない。消すことは危険だからか。だが、現実問題として技術者は倒れていて、灯りは消えていた。王の望んだ通りに。そして、おそらくその後、純粋な器を決めるレースで勝った器を連れていく王はひとりだった。

    この状況からして何が起きたかは明白なのではないでしょうか。

    各地で集めた情報を合わせると、古くからの虫の墓場のような場所であるアビスは、王が肉体を乗り換えて永遠に生きるための装置だったのではないか。灯台はそれを制御していた。地底から上ってくる影に王の仮面をかぶせて王の型(カラ、と訳されているがmould=mold=ケーキの型などの言葉なので型が適切かと思う)に入れて次々と新しい王を作ってきた。

    そう考えると直近の王が、王国のはずれの抜け殻から想像される長く巨大な姿とは違う、普通の虫の姿になっていることの説明がつきます。

    だが、汚染の脅威が増すにつれて、王は自分の不死性をあきらめて、この不気味な装置を器を作る装置に変えた。稼働に当たり、危険であるが灯台の光を落としてたくさんの影を呼び出す必要があった。反対した学者を斬り捨てても強行するほど、王は必死だった。

    こう読みましたが、どうでしょう。正しいかどうかは置いても、「消すというのか、それは」という現在の日本語訳では意味不明すぎて何も想像できなかったことだけは確かです。ホーネットの「虚無を共有しない」みたいな直訳はまだいいんです。意味はわかるので。原語を遠く離れて日本語としても意味がわからないのは困ります。本来の英語のセリフからあれこれ考えるとゾクゾクしたし、全体の物語の重要なヒントとなるので、この箇所は日本語訳の中で最も残念な箇所だと思います。

    夢拾い3

  • 夢見の釘で夢拾い(2)ノスク惨劇の巣

    先日、倒れている虫に夢見の釘を当てた時の言葉が翻訳しづらいであろう問題について触れました(『夢見の釘で夢拾い(1)絶望のキャンプ』)。今日は、その結果が最も残念になっていると感じた場面について。それは、裏を返せば夢の言葉が最も効果的に使われている場面でもある、ノスク戦への道のりです。

    自分そっくりな誰かを追って、迷路のような狭くて暗い道をどんどん進んでいく場面です。誰なのか、事情を聞けないか、と、必死で追っていくと、背後で次々にシャッターが閉まります。

    「引き返せない」

    気づいた時にはノスクの巣に誘い込まれている、あの身の毛もよだつシーンです。

    途中、たくさんの虫が息絶えて横たわっていることにお気づきになったでしょうか。彼らの心をのぞいてみたことは?

    日本語版
    会いたかった … どのように? … いや … ちがう … 私の顔 … おまえは死んでいるのか? … 逃げるな … 親愛なる … 戻れ … 私のように … 兄弟 … どのように?

    分岐があるので多少前後するかもしれませんが、概ねこんな感じで入口から終点であるノスクの巣まで点々と続いています。こうした断片的な言葉から彼らに何が起きたか想像できるでしょうか。僕は、わかりませんでした。そこで言語を英語にしてやってみたら、ようやく状況が飲み込めて、ゾッとしました。英語版は以下の通りです。

    Missed you … How?  … No  … Wrong … My face … You were dead? … Don’t run … Dearest … Come back … Like me … Brother … How?

    これを、状況に即した日本語訳に変えてみよう。

    会いたかった … どうして(ここに)? … そんな … おかしい … 私の顔 … 死んだんじゃなかったの…? … 逃げないで … ダーリン … 戻ってきて … 私そっくり … 兄さん … どうして?

    今度は聞こえてきませんか。ノスクの恐るべき罠にかかった虫たちの最後の叫びが。ノスクは狙った獲物の心の中を探って、親しい相手の姿を作り出し、それを囮におびき寄せます。暗闇の巣はハロウネストの敵対国。倒れているのが、全てハロウネストの虫たちであるのは偶然ではありません。敵国の迷路のような暗がりの中で、不意に目の前に現れた、そこにいるはずのない愛しい相手。恋人であったり、死んだはずのきょうだいだったり。被害者が一番会いたい相手をノスクは選んで化けるのです。

    獲物に大事な相手がいない場合は、主人公の時と同様、本人の姿に化けるということが、「私の顔」あたりから察せられます。

    「あり得ない」と思いながらも夢中で追いかけて行く。「兄さん、死んだんじゃなかったの?会いたかった!逃げないで!」見失いそうになりながら懸命に追っていくと、愛しい相手の顔が突然歪み、正体を現したグロテスクで巨大なクモが襲いかかってくる。途中でやはりおかしいと気づいた者も、毒牙にかかる瞬間まで再会を疑わなかった者も等しく倒れて、そこに横たわる。

    悪夢です。自分のそっくりさんは、実は以前にも一度見かけています。カマキリ族の村から暗闇の巣に入って、ムカデが暴走している難所で迷っていると、さりげなく現れて、そっちにいくと温泉とベンチのある穴に落ちて助かるのですよね。この経験があったので、味方だと思っていたんです。甘かったです。単にノスクは獲物を近くにおびき寄せただけだったのだと思い知りました。

    これ、すごい演出ですよね。ノスクの卑劣さ、狡猾さ、冷酷さ、被害者の戸惑い、恐怖、そして一連の光景が雄弁に語る悲惨な運命が間もなく自分に降りかかるのだという恐るべき予感を、これ以上効果的に、しかも大してコストをかけずに感じさせることが可能でしょうか。ゾクゾクさせるのに、美麗なフル3Dとか必要ないってことがよくわかります。想像力を刺激するのが一番いいんです。現物を見せられるより、想像させる方が、それぞれ自分が一番怖いように想像しますから。

    ああ、怖い怖い。ノスク怖い。舞曲風のかっこいい曲をもらい、キャラデザも群を抜いて不気味で優遇されていますよね。

    ところで神の家でノスクの上位版と戦うと、自分じゃなくてホーネットに化けるんだそうです。主人公の中でホーネットは特別な存在になっていく、ってことが示唆されているんでしょうか。

    ちなみにノスクの攻略は、くれぐれもホーネット(再)を倒して影の衣アリで挑みましょう。難易度が段違いになります。