僕とサブローちゃんが統計の本になりました!

ホライゾン検証漫画:無礼な田舎娘かワイルドなヒロインか

強大な権力を持つ太陽王に向かって、命を助けたとはいえ、いきなりの「おまえ」呼び。ぶぶぶぶ無礼者ー!ってならないのか?

英語では子供に対しても大統領に向かっても等しくyouなので、それをどう訳すかは翻訳者の判断ということになります。なぜ数ある日本語の二人称の中でも、下手すれば失礼にもなる「おまえ」なのでしょう。しかも話者は女性です。生まれながらにして社会から追放されており、育ての親であるロストとしか喋らないまま成人したから礼儀知らずということでしょうか。

そういえば敬称と親称の区別があるヨーロッパの言葉ではどうなってるのでしょう。唯一それなりにわかるドイツ語で見てみました。古い親称Ihrになってます。王はアーロイをduで呼んでいます。duはいつの時代にも一番馴れ馴れ…いえ、親しい呼称です。二人は会ったばかりなので、ここにある差は親しさよりも身分の上下関係です。Ihrの上があった時代もありますが、さすがに最高位以外の呼称で王様を呼ぶとは思えません。つまり、これは多分二人称がIhrとduに分かれたばかりの時代。とても昔です。ドイツ語の訳は、この時代の感じを出そうとしていると思われます。文化レベルが古代ですもんね。

ところで二人称が分化する以前の古代語を扱う西洋の古典作品の邦訳はどうなっているかというと、原語に区別がなくても登場人物同士の関係性や脈絡から「あなた、君、私、僕、俺、おまえ」その他を使い分けて、自然に読めるようになっています。例えば古代ギリシア。知恵ある人として高名であったソクラテスに対して駆け出しの青年学者や良家の坊やが「おまえ」と呼んだら、ギョッとしませんか。そういう時、日本の古典学者さんは、ちゃんと「あなた」にしてくれています。日本語には二人称がたくさんあるので一対一対応にならないところに融通が利く反面、難しさがあり、また訳者の腕の見せ所ともなります。

ただ、上記の古典文学は翻訳がなされたのも昔であること、ホライゾンは文学作品ではなくてゲームであることを考えると、一概におかしい、とは言い切れないかもしれません。言葉は生き物であって、現在話している人たちが今後を変えていくからです。「出れる」「重複」のような誤りでさえ、皆で間違えば正しくなります。

ディアブロの主人公も天使長に向かって「おまえ」と言います。女性でも、です。ただ、この天使長は感じが悪く、この会話もおよそ友好的とは言えない内容の会話であり、加えて主人公はどの職業でもむしろ非常識であった方がふさわしいような突き抜けた人物像なので、おかしいとは感じませんでした。そのように感じたのは僕の感じ方なので、王に対しても「おまえ」と言い放つアーロイの方がいい、と感じる人もいるのかもしれません。

以上を踏まえても、とりあえずドイツ語を喋るアーロイが身分の違いをわきまえていることには、正直ほっとしました。

ホライゾン検証漫画:無礼な田舎娘かワイルドなヒロインか
俺様キャラじゃないんだからさ〜

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