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ドラクエビルダーズ2は団塊世代狙い撃ち?:破壊神シドーと掲示板

先日ドラクエビルダーズ2の水族館パックの話題から国内外の追加コンテンツのあり方の違いについて述べた。今回はビルダーズ2そのものについて。

まず、ドラクエビルダーズは建築系、あるいはサンドボックス型と呼ばれるゲームジャンルに属する。それは基本的に自由を楽しむためのものだ。レールに乗せられた一本道のシナリオを驀進するのではなく、自分で遊び方、生き方、目標や課題を決めて自分のペースでやる。

その過程で自分の意外な面、実は几帳面だった/ズボラだったり、色彩センスが実はあった/独特だったとか、海が好きかと思ったら山だったとか、収集癖があるとか、塔が好き城が好き橋が好きとか、実は好戦的だったとか、そういった自分を発見していくのが醍醐味だ。地面を掘っているつもりだったのに気づいたら自分を掘り返していた、みたいな。

ただ、向き不向きがあって、「自由に遊んでいいよ」と放り出されると、どうしていいかわからず立ち竦んでしまう人が一定数いる。ドラクエビルダーズ1は、そういう人向けにシナリオ重視で作られたサンドボックス系の入門ゲームという位置付けでいいと思う。もともとドラクエの堀井氏はそうやって既にあるゲームの味付けを調整してライトユーザー層を取り込むことに長けている。レフトアライブやFFの失敗など、スクエニ低迷の原因の大きな一つとしてユーザー置いてけぼりがあるのは明白なので堀井氏に他のプロジェクトもチェックしてもらえばいいのにな。

話を元に戻すと、そうして手軽で強いストーリーがあるビルダーズ1は一定の成功を収めたようだ。とりあえずマインクラフト(以下マイクラ)の名前を聞いたこともないような人たちにサンドボックス型ゲームというジャンルを紹介した。だが、ストーリー重視なため、一度クリアしてしまうと、やることがないというのが大きな問題だった。RPGならそれでもいいんだが、建築系として購入した人たちは失望し、早々に離脱したようだ。

そこで2にはその反省点がきっちり活かされている。ドラクエ節のストーリーはそのままに、ユーザーが自分の作ったものの画像をゲーム内で気軽にアップロードしたり情報交換できるようにした。掲示板の設置、SNS化である。ユーザー同士がお互いの刺激となりインスピレーションとなって、承認欲求も満たせる。そのループは運営側はノータッチでもエンドレスに続いていく。賢明だと思う。雑なイベントを乱発して評価を落としていくよりずっといいし、コストもかからない。ただ、人が集まらないと機能しないが、そこはドラクエブランドである程度の集客は保証されているようものだろうから。

さて、前置きが長くなったが、ビルダーズ2の楽しそうな雰囲気に誘われて体験版をやってみた。なんだろう、間が悪い。動作がもっさりしているわけではないのに、間が悪い。会話ごとの気まずーい間(ま)は何だろう。会話表示速度を最速にしたが、まだ妙な間がある。小さな子供向けなのかも、と、なんとかチュートリアルを耐え抜いたが、NPCがいるので間の悪さは続くのだった。

そして肝心の建築がしづらい。持ち上げる、置く時はいいが、破壊する際のターゲットがわからない。壊す、持ち上げるで道具をいちいち切り替えるのがだるい。建築中に相棒がいて話しかけてしまう。シドーどっかに置いとけないのか。さすがにシナリオクリアしたら別行動になるよね?最初から海があるのは、島なんだし、きれいでいいと思った。スライムなどお馴染みのモンスターを殴れるのも楽しい。

同じビルダーズでも1の体験版は防衛戦までの1章丸ごとだったので結構楽しく、購入も考えた(結局買ってない)。2の体験版は、面白くなる前に、「えっ、もう終わり?」という引きの早さ。そして、ろくな建築資材もないまま、もっといい材料でみんなみたいにスゴイもの作りたければ買ってね、と、こうだ。ある種の同調圧力さえ感じるが、未知数すぎて買えない。それも1000円や2000円じゃないんだし。そっと閉じた。

ドラクエビルダーズ2:破壊神シドーと掲示板・最初の島
ビルダーズ2プレイ画面:最初の島

サンドボックス系は、以前の記事にも書いたように、僕はポータルナイツをやり込んでいる。ポータルナイツも建築系にストーリーやミッションといったRPG要素を取り入れており、また、「島を攻略して素材を獲得していく」という全体デザインが似ている。自然と比較せずにいられないため、ビルダーズに対して辛目の評価になってしまうのは否めない。建築のしづらさも、ポータルナイツに慣れすぎているためで、ビルダーズの操作に慣れれば問題ないのかもしれない。だが、ではビルダーズに慣れよう、と頑張る理由が見当たらないのだった。なぜか。努力と得られるものが釣り合わないと感じるからだ。

ポータルナイツ最初の島
ポータルナイツプレイ画面:最初の島

建築系なら、作った作品を写真で手軽に見せ合うのは当然として、作品である世界そのものに飛び込んで、一緒に見てまわったり、手を入れたりできるのが前提となる。サーバー設定しておけば、大勢で一つの世界を共同し、自分が寝ている間に誰かが橋をかけていたり、水道を引いたりして世界の創造が進んでいく、そんな楽しみ方もできる。世界中の、時差のある国の仲間とも共同作業できる。

一方ビルダーズ2のマルチプレイは申し訳程度で、最初の島にしか行き来できない。ローカルマルチもスイッチのみで、ストーリーが売りなのに、その攻略を一緒にできない。せっかくマルチがあるのに一緒にボスと戦えないなんて、つまらないじゃないか。

共に処女地に降り立って「わー、あれ何だ!」「行ってみよう!」「うげ、落ちた!」「アホ!」などと大騒ぎするとか、初心者がうっかり凶悪な裏ボスの部屋を開けてしまい、そのためにレア素材を使っているため諦めきれずSNSで助っ人を募集するとベテランが駆けつけて討伐した上、貴重なボスドロップを「もう持ってるから」と初心者に譲って風のように去ったりとか、そういう胸熱展開もないんだな。ポータルナイツやマイクラをやり込んでいる人がビルダーズに乗り換えたいとは思わないだろう。

堀井ワールドはライトユーザーが入りやすい分、奥行きに乏しいというのが常にコインの裏表になっている。ドラクエ自体が、当時洋ゲーで東西の横綱と言われたウィザードリィとウルティマの組み合わせで、それぞれをガチっているユーザーには軽く遊ぶ分には楽しくても、物足りないものだった。それは車のオートマとマニュアルに似ている。初めての人はマニュアルは辛いのでオートマから入ると楽かもしれない。でも運転そのものが好きになっていくと、それでは物足りなくなってマニュアルに移行していくかもしれない。最初から車が好きな人はマニュアルから入るだろう。そんな感じ。

ビルダーズ2では、地面を掘れない。ポータルナイツではごく初期に地下がどうなっているか、世界の果てがどうなっているのか見たくて、ひたすら掘り進んでいったら、ぽっかり開いた洞穴に壺があったりしてドキドキしたり、松明を設置しながら長い長い地下通路を繋いでいったりしていたが、そのうち島の「底」に達して墜落死した。それを「危険で安心して遊べない」と取るか「本当に自由なのだ」と取るかは人による。 

それは求めるものや好み、プレイスタイルの問題であって、幸い、今はサンドボックス型ゲームはたくさんあるので、それぞれにそれぞれのユーザーが棲み分ければいいだけの話だろう。上に挙げたアツいボス戦なんかも、暑苦しくて面倒と思う人もいるかもしれないし、そうした志向は尊重されるべきだ。

サンドボックス型ゲーム適性診断チャート
あなたにピッタリの箱庭は?サンドボックス型ゲーム適性診断チャート

ドラクエはRPGの、トルネコはローグライクへの、ドラクエビルダーズはサンドボックスへの入り口と考えれば、その存在意義は否定のしようもない。しかしサンドボックスという、人が長く滞在することが見込まれるゲームで、ブランド力とSNS戦略でどの程度ユーザーをつないでおけるのか、そもそも短かすぎるデモから製品版をどれほどの人が購入に踏み切るのか、今後もDLCで稼いでいけるのか、興味深い。

グラブルのアンチラ事件のように一人のユーザーから何十万も搾り取ると社会問題になる。社会との軋轢を生まずに儲けるには、広く浅く集金するのが望ましい。課金要素がエグくないのにセールスランキングに食い込んでいるポケモンGOはその理想を体現している。GOは一時期の爆発的なブームこそ終わったが、高齢者の間で健康づくりのウォーキングにもなる、と人気が続いているらしい。

高齢者といえば団塊世代が引退するというので、裕福な彼らを狙い撃ちにした商品が各業界で各種展開されたが、実はポケモンGOは、最初からそっちがターゲットだったのであれば、大した商才ではないか。待てよ、ビルダーズ2のテンポの悪さも、子供向けかと思ったら、実は高齢者向け…なのだとしたら。

そういえば、地域の大雨警報とかを知らせる放送と似ているかもしれない。あれはお年寄りが聞き取れるようにわざと間を開けているらしいではないか。子供に噛んで含めるように「あのね…(間)お父さんかー…(間)お母さんにー…(間)連れてきて…(間)もらってね」みたいな間かと思っていたら、まさかの「おじーちゃん…(間)好きな食べ物は…(間)何ですかあ」と、そっちの間だったんかい!

そういえば題材になっているのがドラクエ2ってとこも…「シドーか、懐かしいなあ」というリアルタイムで2を遊んだ古参ユーザーを狙っているのか。そうなのか。2の音楽を忠実に再現して使っているのも、そういうことだったのか。

オンラインでガシガシやるのは疲れるので掲示板くらいのゆるいつきあいの方が気楽だ、のんびりと家や城を建てて仲間うちで見せ合って、追加コンテンツはみんな買ってるし、買っておこう、みたいに末長く展開していく、古参兵同窓会みたいなコンセプトなのだとしたら、掲示板のちょっとレトロなデザインや表現も妙に納得できる。

アメーバのピグライフはテレビにも取材され、芸能人もハマって廃課金するほどの盛り上がりを一時期見せたが、あのブラウザゲームのコンセプトは「おばあちゃんでもできるゲーム」だったと聞いた。課金誘導のエグさは別として、誠に慧眼ではないか。高齢化社会なのだから、高齢者向けゲームというものが、もっと真剣に開発されてもいい時がきているのかもしれない。そしてそれは当たれば大金脈に違いない。

ドラクエビルダーズ2:破壊神シドーと掲示板
子供怒るな来た道じゃ

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