65. 目印

みつばち漫画みつばちさん:65. 目印

蜜蜂さんは初めて外勤に出る前は巣を見ながらホバリングして周囲の情報を覚えているらしい「定位飛行」と呼ばれる訓練をしますが、そこから始まって巣の四方八方を飛び回るうち、頭の中にはかなり正確で緻密な地図が出来上がるらしいです。

そもそも蜜蜂さんの暮らしをできるだけ忠実に描くという掟(マイルールですが)を破ってまで筆を持たせた理由の一つには、蜜蜂さんの頭の中にある地図を私も見せてもらいたかったから、というのがあります。

すごいなと思うのは、土地勘がないうちはコンパスや匂いを頼りにして帰巣しているのが、慣れてくると視覚情報を優先するあまり、人間がいたずら…じゃなくて科学的実験のために周辺のものや巣箱そのものの位置を変えたり、色を変えたりすると、ついだまされてしまうところです。でも客観的情報も、探す能力も持っているので「あれっ?」となった後は、かなりひどいいたずらであっても、多くの場合はキチンと元の巣を見つけて帰るのですね。

だまされるなら、すごくないではないか、と思ってはいけません。人間も慣れてくると「こうなっているはず」との見込みで行動して同じように勘違いをしますよね。蜜蜂さんのように小さな体でも、そのように情報の優先度があり、ルーチン化した行動には脳の省力化が行われるというところがすごいではないですか。

私は蜜蜂さんを好きになっていろいろ本を読むようになるまでは(つい最近のことです)、昆虫の行動は化学反応のように一本化された処理だと思い込んでいたので、今も毎日ビックリさせてもらって楽しいです。

日本のミツバチ博士と呼ばれる故坂上先生が著書『ミツバチの世界』で言っておられた、人間と昆虫とは発生の過程がお尻から、口から、と、別の系統なので人間が全ての頂点なのではなく、蜜蜂は違う系統の頂点なのだということを認識すべきである、との言葉の重みをCCD問題について考えていると、つくづく感じます(言葉はうろ覚えです。名著なのに絶版で図書館で借りて読みましたが手許には無いものですから)。

ちなみに、葛が原は焼いたくらいでは「大丈夫、すぐ戻る」のは本当です。うちの近所の、日本蜜蜂さんを見かけた葛は今は花が終わっていろいろな虫さんたちの仕事の成果として毛むくじゃらの豆鞘がいっぱいぶらさがっていて、触るとフサフサと気持ちがいいです。放置してくれているご近所さんありがとうございます!

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